BEST OF 2018 PT.1 - INT’L ALBUMS (20-11)


BEST OF 2018 PT.1 - INT'L ALBUMS (20-11)




20. Auður - Afsakanir


若くからR&B/ヒップホップのプロデューサーとしての才覚を発揮し、2016年にカナダ・モントリオールで開催されたRed Bull Music Academyにも参加したアイスランド気鋭のアーティストの2作目。スカンジナビア圏の冷たく曇った空気感をどことなく漂わせる繊細でメロウな音像は、2013年にSónar Reykjavikで観たJames Blakeに触発されたというエピソードからも頷ける。全編アイスランド語の本作と、英語詞の前作"Alone"、路線は同じだけど言語が違うだけでだいぶ印象が変わるな。






19. How To Dress Well - The Anteroom


前々作"What Is This Heart?"とも、前作"Care"とも毛色が異なる実験作(本作を聴いた後に前作・前々作と遡って聴くとちょっと安心しちゃう)。グリッチの効いたハードな音使いがツボでした。特に"Hunger"のようなダンサブルなトラックが個人的にドンピシャです。ここ最近MVでの上裸率高いよね。





18. Little Jinder - Hejdå


スウェーデンのエレポップ女性SSWの4作目。Lykke LiやFirst Aid Kitなど有名どころが客演に名を連ねているのがちょっと意外だったけど、同郷ミュージシャンとの交友関係も広く着実にキャリアを踏んでいる印象。しかしアルバムタイトルにもなっている"Hejdå(さよなら)"でサビの歌詞に自身の名前(Lilla J)を出しながら「死んで自由になるべき」などと自分で歌ってて相変わらず後ろ向きな感じも健在で安心。 ここでもやっぱり"Deep City"のような四つ打ちトラックに体が反応しちゃう。





17. GusGus - Lies Are More Flexible


1995年結成のアイスランドのエレポップユニット(現在メンバー2名)の通算10作目。割とここ何作品かはずっと追っかけて聴いてたけど、今作は結構引っかかりのある曲が多かったかも。"Lifetime"で聴かせるアップリフティングなシンセのリフなんかちょっと懐かしい感じもして堪りませんな……(またしても四つ打ち)。写真や映像を見てるとメンバーの片割れの人がクロスドレッサーなところも気になったりする。音楽的にもHercules & Love Affairと割と近しいものを感じるんだけど、GusGusはそこまでqueerな印象でもないんだよな。





16. LCMDF - Sad Bangers


フィンランドヘルシンキの姉妹デュオ、実に7年ぶり(!!!)となる2作目。これまでもいくつかシングルを切ってたけど、前作がもっと前のことのように思えるくらいに懐かしい。先行シングル"Another Sucker"やハミングが印象的な"Glitter"に代表されるこの手のパーティーチューン系エレポップは、同じく北欧出身の女性デュオであるIcona Popに持ってかれちゃった感はあるけど、彼女たちの楽曲はそこまでアクが強くなくて聴きやすい。2010年代ポップスの王道を行くキャッチーさを持ち合わせつつも、アップテンポな曲も極端に陽に振り切れず、ちょっぴり切なさや翳りのようなものを覗かせる辺りにらしさを感じる。何しろ"Sad Bangers"だもんね。





15. Tove Styrke - Sway


世界デビュー作の前作"Kiddo"は個人的に(年間ベストに挙げるほど)めっちゃ好きだったけど商業的にはそこまでヒットにはならず。しかし本作で軌道に乗ってきた感があって古参的にはとても嬉しい限りです。全8曲(うち1曲はLordeの楽曲のカバー)でトータル26分。のちに新曲が1曲追加されたエディションが出るも30分未満、と言うコンパクトな構成に、楽曲アレンジも引き算的なミニマリズムすら感じさせるシンプルさ。とりわけミニマルな"On the Low"がシングル楽曲群を押しのけて一番好きだったりする。前作とは違ったベクトルのユニークさ。決して売れ線ではないけど、痒い所に手が届く感じ。オルタナポップクイーン街道まっしぐら。





14. Louis Cole - Time


Brainfeederと契約を結んだ鬼才Louis Cole、今年はKnower(ビルボード大阪)とソロ(京都メトロ)で彼のパフォーマンスを2回観る機会がありました。バカテクなドラミングの応酬で圧倒したり、真顔で妙なダンスを踊ったり…といったエキセントリックで変態的な側面がどうしても強くなりがちだけど、アルバム音源を聴くと全然穏やかだったりする。音楽的素養の下敷きもしっかりしてるし、きっと根は真面目なんだろうな。





13. Rebecca & Fiona - Art of Being A Girl


まずジャケが最高。2014年リリースの前作"Beauty is Pain"が割と攻めな姿勢の内容だったのに対し、本作はフェミニズムを内省的に掘り下げつつ昇華していったような内容で、アルバムタイトルの"Art"のニュアンスもおそらく「術(すべ)」とか「技巧を要する物事」の方が正解かも。そういえば2015〜17年の間(Party Hard期)もコンスタントにシングルやEPを発表してたけど、あくまでそれはそれって感じで、アルバムを出すときはきちんとひとつの作品としてコンセプトを固めた上でリリースしたいんだろうなと。トロピカルハウス以降のチルめな楽曲が大半を占める中、先行シングルにもなった切な系エレポップの"Need You"がダントツに良い。





12. John Grant - Love is Magic


楽曲(各曲のタイトルからして強め)・ビジュアル(ジャケが全てを物語っている)の双方で吹っ切れ具合に拍車をかけてきた4作目。5年前の"Pale Green Ghosts"と比べると本当に別人みたい。笑
…なんて思わせるほどにコミカル且つシニカルな悲喜劇のようなアルバムで、歌詞もストーリーテラーっぽい目線で読んでみると面白い。淡々としたテクノサウンドに熱のこもった語りが乗っかる"Diet Gum"なんか聴きながら笑っちゃった。あ、でもちゃんと(?)いつものJohn Grantなバラード曲もあるのでご安心ください。しかしこのいい意味でとっ散らかった感じ、歴代アルバムの中で一番好きかも。





11. Aseul - Asobi


韓国インディ音楽シーン期待の女性エレポップSSW。2015年まではYukari名義で活動しており、PLANCHAからアルバム"Echo"の国内盤が出ていたのでご存知の方も多いかも。改名後2作目となる本作は全7曲とミニアルバム的位置付けながら、セルフプロデュース能力の高さに裏付けされた粒揃いな楽曲が並ぶ良盤。沖縄で撮影されたMVが印象的な先行シングル"Sandcastles"をはじめ全体的に夏向きで爽やかなトーンで、風通しの良い透明感のあるボーカルとの相性もバッチリ。実は4月にMV撮影後に九州を旅行中のご本人にお会いする機会がありましたが、日本語も上手でチャーミングな方でした。