BEST OF 2018 PT.2 - INT’L ALBUMS (10-1)


BEST OF 2018 PT.2 - INT’L ALBUMS (10-1)




10. Robyn - Honey


王の帰還。前作"Body Talk"シリーズから8年、喪失を歌ったカムバック曲"Missing U"の歌詞が彼女自身の真に迫るようで本当に泣けるんだけど、これがアルバムの起点となり、悲しみや困難を超えた先に見える景色を自身の持つポップネスを以って体現するような曲構成になっているようで非常に秀逸です。全体的に落ち着いたトーンながらビートやパーカッションが際立ち、しっかり踊らせる内容にもなってます。特に"Between The Lines"から"Beach2k20"の90sチックなハウス〜ラウンジの流れにやられました。





9. Superoganism - Superorganism


インターネット発の大所帯多国籍バンド。適度な脱力感のヴォーカルに、サイケでチープなビジュアル展開、多ジャンルを横断する雑食的なサウンドなど、安易に「今っぽい」と言ってしまいたくはないんだけど、全部がごちゃ混ぜになっても破綻せず散漫にもならずに完成されてて本当に面白い。何より大人数ならではのわちゃわちゃ感が見ていて楽しい。NPRのMusic Tiny Desk Concertのパフォーマンス映像なんかもう大好き。来月の来日公演がもう楽しみで仕方がないです。(宇多田ヒカル"パクチーの歌"のカバーも聴けたらいいな)





8. Christine and the Queens - Chris


前作リリース以降、ヨーロッパを中心に大躍進を遂げた彼女がいよいよ世界に照準を当ててきた。鬼キャッチーな80s風味のエレクトロポップにMJ的ファンクネスをも伴うパフォーマンス、ジェンダーレスな出で立ちも含めバリッバリに決まってます。フランス語と英語の2バージョンあり(やっぱりネイティブなだけあってフランス語版の方がしっくり来る)。もっと日本でも知名度上がってもいいんじゃなかろうかと常々思ってましたが、Hosstessが国内盤をリリースしてくれました。





7. L'Impératrice - Matahari


フランスのディスコでファンクな6人組バンド。紅一点のヴォーカリストFlore Benguiguiのキュートなルックスと歌声に心を奪われがちですが、楽曲を支えるバックの演奏陣のテクニックにも要注目です。クールでシャレオツな楽曲が多い一方でふざけ気味のアー写を撮ってみたりと、何よりメンバーみんなが仲良さそうなところがいいんだよな……(instagramを見ながら)。いろんな映画のワンシーンを切り取ってコマ撮りで再編集したMVと楽曲の相性が素晴らしい"Erreur 404"や、フレンチポップを地で行くような歌い出しが印象的なミッドチューン"Paris"など、捨て曲なしの名盤。日本では編集版EP"Dreaming of You"として配信リリースがされていますが、是非Amazonなどでフルアルバムとして聴いていただきたい。"ヌーヴェル・ファンク"……なんてジャンルは存在しないんだけど、そう名付けたくなるような名盤。
とにかくまずはアルバムタイトル曲"Matahari"のイントロでガツンと。





6. Kimbra - Primal Heart


2017年8月に行われた来日公演(ビルボード東京)を運よく観ることができ、その時のセットリストが代表曲ほぼ丸無視でリリース前の本作からの楽曲多めという尖った内容で非常にシビれたもんで、個人的にも待望のアルバムとなりました。自らエフェクターをいじりながら歌うスタイルに、サイケなVJとビルボードのラグジュアリーな空間とのギャップも含め、クリエイティビティに磨きをかけた素晴らしいパフォーマンスでした。ちょっと肩透かし喰らった感があった前作"The Golden Echo"を経て、3作目にして今の彼女のフィーリングに合致するスタンスを確立したような印象。
Skrillexとの共同プロデュースによる"Top of the World"を筆頭にダブステップとの相性の良さを見せつつも、実験的なサウンドと従来から持ち合わせているポップネスとのバランスが巧く保たれていて、シングル曲以外の新録曲だと"Recovery""Lightyears"なんかもうドンピシャ。アルバムリリース以降に発表されたDawn Richard("Version of Me")Snoop Dogg("Top of the World")とのコラボも必見。





5. MYSS KETA - UNA VITA IN CAPSLOCK


イタリア・ミラノより突如現れた覆面のフィメールラッパー。今年本国イタリアのUniversal Musicと契約し徐々に知名度を上げている彼女。メジャー1作目となった本作は、若干アングラ感さえも漂う謎めいたビジュアルの時点でもう満点な上に、アルバムタイトル曲"UNA VITA IN CAPSLOCK"に象徴されるようなダークでミニマルなトラックに乗っかるイタリア語のラップが呪文のように頭から離れない。様々なトラックメイカーとタッグを組み変幻自在のスタイルを見せながらも自身の声ひとつでの世界観をガッチリ固めてくるラッパーとしての魅力も充分。フェミニズムとも交差するシニカルな歌詞世界も面白い。
"MONICA""BOTOX"(タイトルの時点で優勝)などMVが出ている楽曲も多いので是非。





4. The Presets - Hi Viz


オーストラリアのエレクトロポップデュオによる4作目。まるでパーティーの事後に思い出す最中のおぼろげな記憶の走馬灯のように目まぐるしくスタイルを変える楽曲群は、カラフルでごちゃごちゃしたジャケットのアートワークがまさにぴったり言い当てているよう。同郷のアーティストPNAUなんかもそうだけど、豪州エレクトロ勢って実は結構ぶっ飛んだ人たちが多いのかな。前作"Pacifica"からの6年と言うブランクを一掃するように、アルバムの最後まで気を緩めずに"Untll The Dark"まで駆け抜けるようにフィニッシュする流れが気持ちいい。バラードソングなんてひとつも入ってません(確かに彼らにバラードっていうイメージが全く出てこない)。ただひたすらハードに踊らせてくれます。





3. Familjen - Kom


前作"Allt På Rött"から5年半ぶりのリリースとなった4作目。2014年に本国スウェーデンの人気番組"Så mycket bättre"シーズン5に出演したり(ちょっと意外に思ったけどすごく良かった)、その翌年の2015年にリリースされたTove Styrkeのアルバム"Kiddo"のプロデュースを手がけたりと、何気に話題に事欠かなかったここ数年。待望のアルバムとなりましたが、歌い出しのワードがそのままアルバムタイトルにもなっている先行シングル"Rök och speglar"や、のちにシングルカットもされた本作きってのキラーチューン"En gång till"など、アシッドにうねるシンセもメロディアスな歌モノも健在で、時代や流行に囚われない、まっすぐでひねくれた珠玉の楽曲が並ぶ最高のカムバック作を届けてくれました。彼の作品には欠かせないNinsun Poliを始めとした3名の女性ヴォーカルの客演陣が華を添えるようにアルバムの良いスパイスになってます。





2. SOPHIE - Oil of Every Pearl’s Un-Insides


6月に突如ドロップされた初のオリジナルフルアルバム(前作"Products"は編集盤的扱い)。2017年10月にリリースされたシングル"It's Okay To Cry"より本人歌唱+顔出しビジュアルでカムバック、続くブルータルなBDSM的世界観を伴う"Ponyboy"で覚醒モードに突入。さらに"Faceshopping"で自らの顔面を解体……と最早敵なし状態のSOPHIE嬢。アルバムでは前述のシングル群3曲で幕を開け、緊張感を湛えた静的なアンビエント/ドローンで固めた中盤を越え、突如挟まれる(みんな大好き)バブルガムベースアンセム"Immaterial"で一旦安心させておいて、ラストの"Whole New World/Pretend World"で怒涛の揺さぶりをかける暴力的なまでに美しい流れ。インダストリアル的質感の尖った音使いとの緩急がドラマチックに混ざり合い、ジャンルもジェンダーも飛び越えた稀代の名盤。





1. Cosmo - Cosmotronic


2018年最大のディスカバリーにして今年一番のお気に入り。1月にリリースされて以降、年中通して聴いてました。
CosmoことMarco Jacopo Bianchiはイタリア・ミラノ出身の男性アーティストで、2002年にインディーバンドDrink To Meのヴォーカリストとして音楽活動を開始。バンド自体は2017年に解散してしまいましたが、2012年の暮れ頃に始動したソロ活動は継続。通算3作目となる本作はイタリア本国のアルバムチャートで最高13位、トップ100に延べ30週にわたりチャートインするスマッシュヒットを記録しています。ツアーも軒並みソールドアウトになるほど人気の模様。イタリア語のポップスは本当にびっくりするほど今の今までノーマークでしたが、こんなにクールでイケイケなエレクトロ・ポップをやってる兄ちゃんがいるなんて……!と感動しました。
アルバムは歌モノポップス+フロアライクなインストナンバーの2枚組構成。大衆音楽からクラブシーンまで包括するような内容で、アッパーなトランス〜エレクトロハウスからパーカッシブなバレアリックサウンドまで縦横無尽。これ、イタリアどころか世界的にも全然通用するじゃないですか。どこを切り取ってもカッコイイ。自信を持ってオススメできます。聴いてください。