BEST OF 2018 PT.4 - LATIN ALBUMS (10-1)


BEST OF 2018 PT.4 - LATIN ALBUMS (10-1)




10. Mitú - Los Ángeles


コロンビアのエレクトロニック・デュオ4作目。今年は彼らにとって躍進の年だったように思います。ヨーロッパのフェス参加やツアーにも積極的で、11月にはなんとイギリス・ロンドンで開催されたNew Orderのライブでオープニングアクトを務めるという大役をも務めるまでに。着実にキャリアを重ねた頼もしい2人の新作は前作からわずか8ヶ月という短いスパンで届けられました。歌ものメインだった前作"Cosmus"と対照的に本作は全編インスト楽曲による、本作リリース後のツアーを予期させる"音楽旅行記"のような作品。ちなみに筆者は1曲目"Hawaii"で声のサンプルを提供しました(日本語のポエトリーリーディングなのでちょっと恥ずかしい)。





9. Fanny Leona - Ningen


チリの4ピースバンドPlaya Goticaの紅一点ヴォーカルのソロ作はまさに"ツンデレ系エレポップ"とも称したくなるようなキュートとバイオレンスの二面性が内包されたユニークな一枚。彼女の敬愛するJ-POPやオタク文化のエッセンスをふんだんに盛り込んだ百合ソング"Mi Chica Favorita"を筆頭に80s的味付けのテクノポップとの相性の良さを見せ、バンドでの野生的な姿と違う彼女のパーソナルな"Ningen"的な部分を見せています。





8. Pedrina - Prisma


コロンビアの女性シンガーのソロ初作品。2012年よりデュオPedrina y Rioを結成し、本国コロンビアを中心にラテンアメリカの国々で精力的に活動していましたが、今年の春に互いの活動に注力するためデュオを解散。
そんな活動当初からの彼女の最大の持ち味であるスウィートな声質はトロピカルなフォークサウンドとの親和性が高く、"常春の国"とも称されるコロンビアの穏やかで暖かな空気感さえも運んでくれるようです。ジャズやエレクトロサウンドのエッセンスも取り入れながらソロデビュー作にして彼女のキャリアに裏打ちされた世界観を早くも確立しています。1つ前のエントリーでも紹介したJuan Ingaramoや、デュオの元相方であり彼女の歌の師でもあるRioも本作に客演で参加しています。





7. Louta - Enchastre


(まさかの)祝・メジャーデビュー!ということで、トレードマークのポロシャツ+パンツスタイルとシアトリカルでエキセントリックなパフォーマンスで一躍アルゼンチン・ポップス界の問題児(?)として人気を博しているLOUTAの2作目です。1曲目"PUEDE SER"で意外にも歌ものエレクトロハウスの様相で驚きましたが(これはこれでめちゃんこ良い)、先行シングルの"TODO CON EL CELU"のトライバルなズンドコサウンドに一撃でやられました。いつか現地の夏フェスかワンマンのでっかい会場で彼のパフォーマンスを見てみたいものです。





6. Rosalía - El Mal Querer



スペイン・バルセロナから現代のフラメンコ・クイーン爆誕。伝統的なフラメンコにR&Bやポップスの要素が見事にブレンドされた楽曲群に、数々の秀逸なMV(映像チームCANADAがマジで良い仕事してます)に代表されるストリートのサグい世界観を伴うビジュアルアプローチで、今年はスペインだけでなく一気に世界的な評価を得た彼女。今後はより大きなラテンポップス市場を持つUSから中南米までどんどん活躍の場を広げていくことでしょう。地元のタワレコにすら手書きの紹介POP付きで一面展開されるレベルでどんどん推されてます。すでにベテランのような風格さえ漂わせる無敵の名盤。





5. Lavina Yelb - Otra Vez Otra


チリのアンダーグランドシーン注目のトラックメイカーLavina Yelb(またはAníbal Bley)。楽曲だけでなくアートワークや映像のイラストも自身で手がけ唯一無二の世界観を展開していますが、不思議な作風も相まって実にミステリアス。ほんと一体どんな脳味噌してるんだろう。"Akumaitokosen"(アクマイト光線)なんてタイトルの楽曲もあり、日本のアニメからの影響も多少なりとも受けているのかもしれません。





4. Ignacio Herbojo - Terremoto


アルゼンチンの男性SSWの2作目は、ピアノ一本弾き語りの前作"Solo"と打って変わってのバンドサウンド。スタイルを変えてもソングライティング能力の高さがしっかりと発揮されており、ニューウェイヴ的アプローチの"Ocaso"やバラードソング"Desierto"と言った先行シングルを筆頭に、エモーショナルかつメロディアスな珠玉の楽曲たちが文字どおり"Terremoto"(=地震)のように聴き手の感情を揺さぶります。





3. Javiera Mena - Espejo


昨年は待望の来日ツアー(全通しました)も果たしてくれたチリのエレクトロ・ポップ・クイーン、通算4作目のアルバムにしてメジャーデビュー。楽曲制作においても前作まで長きにわたりタッグを組んでいたCristián Heyneの元を離れ、新たな境地を開拓せんとばかりにフレッシュで洗練された楽曲が並びます。このほど公開された"Alma"のMVでは世界各地を飛び回るツアーのドキュメンタリー的な側面もあり、メジャーレーベルとの契約を機に改めてミュージシャンとしての矜持を持って覚悟を決めた背中を追うような映像に彼女の歩んできた軌跡を振り返りながら、一ファンとして泣けてきちゃいます。どこに行っても彼女は変わらずに音楽を続けてくれる。そう確信させてくれるような頼もしさをこのアルバムで証明してくれました。ついて行きます、どこまでも。





2. Valdes - Gris


アルゼンチン・コルドバ出身のValdes兄弟から成る4ピースバンドの2作目。前作に比べてミニマルで落ち着いたトーンでまとまった楽曲に、ムード満点のPanchoの美声が際立つ安定感抜群のアルバムです。アップテンポの"Qué Me Está Pasando"やインストナンバーのタイトルトラック"Gris"など踊れるナンバーも押さえつつ、一過性のポップスなどには落ち着かないバンドメンバーやヴォーカルの技巧でしっかりと聴かせてくれます。






1. Putochinomaricón - Corazón De Cerdo Con Ginseng Al Vapor


スペイン・マドリード出身の中国系アーティストによるファーストLP。自虐的なアーティスト名に鋭い眼光のクィアな出で立ち、PC Music以降のインターネット・ミュージックを通過したポップでストレンジな楽曲群、ジェンダーやポリティクスにまで斬り込むアーティストとして真っ当なアクティビズム的姿勢も含め、どこを取っても注目せざるを得ない要素しかありません。MVも多数出ているので是非。今会いたいミュージシャンNo.1です。