2019年の(短い)まとめ

2019年はレコード旧譜を漁ってばかりで新譜をあまり追えておらず、さらっと振り返るのみに留めておきます。と思いつつも、並べてみると結構お気に入りのアルバムが多くて安心。もうなんか本当に好きなアルバムは全部CDと一緒にレコードでも欲しいな……という気持ちが芽生えるようになってしまったレコード沼元年。

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FAVORITE ALBUMS OF 2019 (邦楽)

フィロソフィーのダンス - エクセルシオール

② 柴田聡子 - がんばれ!メロディー

土岐麻子 - PASSION BLUE

YMCK - FAMILY CIRCUS

⑤ Omodaka - 郡上節

⑥ 脇田もなり - RIGHT HERE

でんぱ組.inc - ワレワレハデンパグミインクダ

⑧ パソコン音楽クラブ - Night Flow

⑨ in the blue shirt - Recollect the Feeling

(次点:キリンジ - cherish)

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Kornél Kovacs - Stockholm Marathon

Friendly Fires - Inflorescent

③ Toro y Moi - Outer Peace

④ Slayyyter - S/T

⑤ Metronomy - Metronomy Forever

⑥ Hannah Diamond - Reflections

⑦ M¥SS KETA - Paprika

Ciara - Beauty Marks

⑨ Kaytranada - BUBBA

(次点:FKA twigs - Magdalene) 

 

あと、はてなダイアリーが知らない間にモデルチェンジしててびっくりしました。2010年代も終わるし、ここの更新もこれで終わりかな〜と思っているんですが、音楽に関するポストはこちらで細々と続けていく予定です。 では!

BEST OF 2018 PT.4 - LATIN ALBUMS (10-1)


BEST OF 2018 PT.4 - LATIN ALBUMS (10-1)




10. Mitú - Los Ángeles


コロンビアのエレクトロニック・デュオ4作目。今年は彼らにとって躍進の年だったように思います。ヨーロッパのフェス参加やツアーにも積極的で、11月にはなんとイギリス・ロンドンで開催されたNew Orderのライブでオープニングアクトを務めるという大役をも務めるまでに。着実にキャリアを重ねた頼もしい2人の新作は前作からわずか8ヶ月という短いスパンで届けられました。歌ものメインだった前作"Cosmus"と対照的に本作は全編インスト楽曲による、本作リリース後のツアーを予期させる"音楽旅行記"のような作品。ちなみに筆者は1曲目"Hawaii"で声のサンプルを提供しました(日本語のポエトリーリーディングなのでちょっと恥ずかしい)。





9. Fanny Leona - Ningen


チリの4ピースバンドPlaya Goticaの紅一点ヴォーカルのソロ作はまさに"ツンデレ系エレポップ"とも称したくなるようなキュートとバイオレンスの二面性が内包されたユニークな一枚。彼女の敬愛するJ-POPやオタク文化のエッセンスをふんだんに盛り込んだ百合ソング"Mi Chica Favorita"を筆頭に80s的味付けのテクノポップとの相性の良さを見せ、バンドでの野生的な姿と違う彼女のパーソナルな"Ningen"的な部分を見せています。





8. Pedrina - Prisma


コロンビアの女性シンガーのソロ初作品。2012年よりデュオPedrina y Rioを結成し、本国コロンビアを中心にラテンアメリカの国々で精力的に活動していましたが、今年の春に互いの活動に注力するためデュオを解散。
そんな活動当初からの彼女の最大の持ち味であるスウィートな声質はトロピカルなフォークサウンドとの親和性が高く、"常春の国"とも称されるコロンビアの穏やかで暖かな空気感さえも運んでくれるようです。ジャズやエレクトロサウンドのエッセンスも取り入れながらソロデビュー作にして彼女のキャリアに裏打ちされた世界観を早くも確立しています。1つ前のエントリーでも紹介したJuan Ingaramoや、デュオの元相方であり彼女の歌の師でもあるRioも本作に客演で参加しています。





7. Louta - Enchastre


(まさかの)祝・メジャーデビュー!ということで、トレードマークのポロシャツ+パンツスタイルとシアトリカルでエキセントリックなパフォーマンスで一躍アルゼンチン・ポップス界の問題児(?)として人気を博しているLOUTAの2作目です。1曲目"PUEDE SER"で意外にも歌ものエレクトロハウスの様相で驚きましたが(これはこれでめちゃんこ良い)、先行シングルの"TODO CON EL CELU"のトライバルなズンドコサウンドに一撃でやられました。いつか現地の夏フェスかワンマンのでっかい会場で彼のパフォーマンスを見てみたいものです。





6. Rosalía - El Mal Querer



スペイン・バルセロナから現代のフラメンコ・クイーン爆誕。伝統的なフラメンコにR&Bやポップスの要素が見事にブレンドされた楽曲群に、数々の秀逸なMV(映像チームCANADAがマジで良い仕事してます)に代表されるストリートのサグい世界観を伴うビジュアルアプローチで、今年はスペインだけでなく一気に世界的な評価を得た彼女。今後はより大きなラテンポップス市場を持つUSから中南米までどんどん活躍の場を広げていくことでしょう。地元のタワレコにすら手書きの紹介POP付きで一面展開されるレベルでどんどん推されてます。すでにベテランのような風格さえ漂わせる無敵の名盤。





5. Lavina Yelb - Otra Vez Otra


チリのアンダーグランドシーン注目のトラックメイカーLavina Yelb(またはAníbal Bley)。楽曲だけでなくアートワークや映像のイラストも自身で手がけ唯一無二の世界観を展開していますが、不思議な作風も相まって実にミステリアス。ほんと一体どんな脳味噌してるんだろう。"Akumaitokosen"(アクマイト光線)なんてタイトルの楽曲もあり、日本のアニメからの影響も多少なりとも受けているのかもしれません。





4. Ignacio Herbojo - Terremoto


アルゼンチンの男性SSWの2作目は、ピアノ一本弾き語りの前作"Solo"と打って変わってのバンドサウンド。スタイルを変えてもソングライティング能力の高さがしっかりと発揮されており、ニューウェイヴ的アプローチの"Ocaso"やバラードソング"Desierto"と言った先行シングルを筆頭に、エモーショナルかつメロディアスな珠玉の楽曲たちが文字どおり"Terremoto"(=地震)のように聴き手の感情を揺さぶります。





3. Javiera Mena - Espejo


昨年は待望の来日ツアー(全通しました)も果たしてくれたチリのエレクトロ・ポップ・クイーン、通算4作目のアルバムにしてメジャーデビュー。楽曲制作においても前作まで長きにわたりタッグを組んでいたCristián Heyneの元を離れ、新たな境地を開拓せんとばかりにフレッシュで洗練された楽曲が並びます。このほど公開された"Alma"のMVでは世界各地を飛び回るツアーのドキュメンタリー的な側面もあり、メジャーレーベルとの契約を機に改めてミュージシャンとしての矜持を持って覚悟を決めた背中を追うような映像に彼女の歩んできた軌跡を振り返りながら、一ファンとして泣けてきちゃいます。どこに行っても彼女は変わらずに音楽を続けてくれる。そう確信させてくれるような頼もしさをこのアルバムで証明してくれました。ついて行きます、どこまでも。





2. Valdes - Gris


アルゼンチン・コルドバ出身のValdes兄弟から成る4ピースバンドの2作目。前作に比べてミニマルで落ち着いたトーンでまとまった楽曲に、ムード満点のPanchoの美声が際立つ安定感抜群のアルバムです。アップテンポの"Qué Me Está Pasando"やインストナンバーのタイトルトラック"Gris"など踊れるナンバーも押さえつつ、一過性のポップスなどには落ち着かないバンドメンバーやヴォーカルの技巧でしっかりと聴かせてくれます。






1. Putochinomaricón - Corazón De Cerdo Con Ginseng Al Vapor


スペイン・マドリード出身の中国系アーティストによるファーストLP。自虐的なアーティスト名に鋭い眼光のクィアな出で立ち、PC Music以降のインターネット・ミュージックを通過したポップでストレンジな楽曲群、ジェンダーやポリティクスにまで斬り込むアーティストとして真っ当なアクティビズム的姿勢も含め、どこを取っても注目せざるを得ない要素しかありません。MVも多数出ているので是非。今会いたいミュージシャンNo.1です。




BEST OF 2018 PT.3 - LATIN ALBUMS (20-11)


BEST OF 2018 PT.3 - LATIN ALBUMS (20-11)




20. Piscis Machine - Espejismo


アルゼンチン・ブエノスアイレスのエレクトロポップデュオ初のアルバム。スペイシーでキラキラな80sシンセサウンドど真ん中。vaporwaveにも通ずる空気感もありつつ、あくまで歌モノでポップにまとまった良盤。





19. De La Rivera - A La Deriva


アルゼンチン中央部の街Villa María(ビジャ・マリア)出身の3ピースバンド(2兄弟+いとこ)。3作目のスタジオアルバムとなる本作はMiranda!のAlejandro Sergiやサクソフォン奏者のWilly Crookといった燻し銀のベテラン勢が華を添えるとびきりゴキゲンでファンキーな一枚。ここでもやはり80sなアプローチが(映像参照)。





18. Los Pat Moritas - Amor Punga


アルゼンチンでチップチューン/8bitミュージックのレーベルBlipBlopを主宰するアーティスト/スタジオエンジニアのNaku Berneriによるプロジェクトの新作。Commodore 64のチップ音源を用いて作られた本作はなんとこのご時世にフロッピーディスク(!!!)でのリリースを敢行し、徹底的なまでにレトロゲームとチップサウンドへの愛を貫いた歌モノデジタルクンビアの意欲作。





17. Ibiza Pareo - Bailemos Juntas


アルゼンチン・ブエノスアイレスの女性デュオによる2作目。昨今のアルゼンチンの音楽シーンは欧米に引けを取らない洗練されたサウンドを聴かせるミュージシャンが多い印象でしたが、彼女たちの音楽からはしっかりラテンの風を感じます。フラメンコチックなギターが情熱的な"En una Cita"が来たと思えば、次の曲"Loba de Noche"でクールにドラムマシンをガシガシ鳴らすエレクトロハウスに早変わりしたりとサウンドの振り幅が面白い。





16. Lux Raptor - Tercera Dimension


アルゼンチン・ブエノスアイレス電子音楽家Marina Perezのソロプロジェクト。80年代のダーク・ミニマル的質感も覗かせるローファイで実験的な楽曲群は全て彼女自身の手で構築されたもので、Minimal Waveあたりから出ていてもおかしくないようなクオリティ。YouTubeには彼女が歌ってる後ろでシェフが料理するというキッチンスタジオでセッションライブの映像なんかもあって非常に興味深いです。





15. Juan Ingaramo - Best Seller


アルゼンチン第2の都市コルドバ出身の男性アーティスト。3作目にして自身のアルバムに"Best Seller"という大仰なタイトルを冠するほどの自信作であることはもう一聴してすぐに分かります。全8曲・28分というコンパクトさやメジャー感のある味付けのアレンジもトレンドを汲んでいてリピート必至。LOUTAやElsa y Elmarなど客演のツボの押さえどころもバッチリ。そして何より本人の出で立ちが堂々としていて本当にかっこいいんですよね(去年コルドバでお会いしましたがマジでイケメンでした……)。





14. Ava Rocha - Trança


ブラジルのネオ・トロピカリアの旗手Ava Rocha(アヴァ・ホーシャ)、もはや「映画監督Glauber Rochaの娘」といった肩書きも不要なまでに自身の音楽性を確立した3作目。全19曲のフルボリューム、参加ミュージシャンも多数で終始賑やか。ブラジルってもう広すぎてどこから音楽を掘り下げていいか本当に分からなかったんだけど、彼女がその扉を開いてくれました。





13. Jvlian - Crisis


アルゼンチン・ブエノスアイレスのヒップホップ集団。とにかく自由でカッコイイんだけど、ジャズやソウルをミックスした確かな技巧の土壌があってのことなのだと聴きながら感心しちゃう。ラップスキルはもちろん、ビートの肝となるドラムスの存在感も忘れてはいけない。"Sujeto a Espacio"の途中でいきなりフリースタイルになる所が個人的ハイライトです。





12. Rubio - Pez


チリのバンドMiss Garrison(現在は活動休止)でヴォーカル/ドラムスを務めていたFran Straubeのソロプロジェクト。ダークで実験的なエレクトロポップ路線や彼女の持つダウナーで耳に残る声質(ほんとにいい声してる)も相まって、一瞬Niki and the DoveやThe Knifeあたりの北欧のアーティストを想起させますが、彼女はラテンだけでなくアジアンな音使いも取り入れたりもしていて無国籍なサウンドスケープを展開しています。バンド時代も好きだったけど、ソロになってのこの新境地開拓はとても嬉しい。





11. Francisco Victoria - Prenda


女性アーティストが強いチリのエレクトロポップシーンの中でニューカマー男子が現れてくれました。チリ南部のアラウカニア州(Araucanía)出身の弱冠22歳。14歳から曲を書き始めた彼は18歳で学校を辞め、地元を出てチリの首都サンチアゴで本作のプロデューサーであるAlex Anwandterが主催するワークショップに参加したことがきっかけでデビューを果たしたという逸話の持ち主。
とことんポップでメランコリックなサウンドに、甘い歌声とマスクの持ち主とデビュー作としてはもう完璧。ちょっとAlex Anwandter色が強いところもありますが、今後どう化けるか。早くも先が楽しみな期待の新星です。


BEST OF 2018 PT.2 - INT’L ALBUMS (10-1)


BEST OF 2018 PT.2 - INT’L ALBUMS (10-1)




10. Robyn - Honey


王の帰還。前作"Body Talk"シリーズから8年、喪失を歌ったカムバック曲"Missing U"の歌詞が彼女自身の真に迫るようで本当に泣けるんだけど、これがアルバムの起点となり、悲しみや困難を超えた先に見える景色を自身の持つポップネスを以って体現するような曲構成になっているようで非常に秀逸です。全体的に落ち着いたトーンながらビートやパーカッションが際立ち、しっかり踊らせる内容にもなってます。特に"Between The Lines"から"Beach2k20"の90sチックなハウス〜ラウンジの流れにやられました。





9. Superoganism - Superorganism


インターネット発の大所帯多国籍バンド。適度な脱力感のヴォーカルに、サイケでチープなビジュアル展開、多ジャンルを横断する雑食的なサウンドなど、安易に「今っぽい」と言ってしまいたくはないんだけど、全部がごちゃ混ぜになっても破綻せず散漫にもならずに完成されてて本当に面白い。何より大人数ならではのわちゃわちゃ感が見ていて楽しい。NPRのMusic Tiny Desk Concertのパフォーマンス映像なんかもう大好き。来月の来日公演がもう楽しみで仕方がないです。(宇多田ヒカル"パクチーの歌"のカバーも聴けたらいいな)





8. Christine and the Queens - Chris


前作リリース以降、ヨーロッパを中心に大躍進を遂げた彼女がいよいよ世界に照準を当ててきた。鬼キャッチーな80s風味のエレクトロポップにMJ的ファンクネスをも伴うパフォーマンス、ジェンダーレスな出で立ちも含めバリッバリに決まってます。フランス語と英語の2バージョンあり(やっぱりネイティブなだけあってフランス語版の方がしっくり来る)。もっと日本でも知名度上がってもいいんじゃなかろうかと常々思ってましたが、Hosstessが国内盤をリリースしてくれました。





7. L'Impératrice - Matahari


フランスのディスコでファンクな6人組バンド。紅一点のヴォーカリストFlore Benguiguiのキュートなルックスと歌声に心を奪われがちですが、楽曲を支えるバックの演奏陣のテクニックにも要注目です。クールでシャレオツな楽曲が多い一方でふざけ気味のアー写を撮ってみたりと、何よりメンバーみんなが仲良さそうなところがいいんだよな……(instagramを見ながら)。いろんな映画のワンシーンを切り取ってコマ撮りで再編集したMVと楽曲の相性が素晴らしい"Erreur 404"や、フレンチポップを地で行くような歌い出しが印象的なミッドチューン"Paris"など、捨て曲なしの名盤。日本では編集版EP"Dreaming of You"として配信リリースがされていますが、是非Amazonなどでフルアルバムとして聴いていただきたい。"ヌーヴェル・ファンク"……なんてジャンルは存在しないんだけど、そう名付けたくなるような名盤。
とにかくまずはアルバムタイトル曲"Matahari"のイントロでガツンと。





6. Kimbra - Primal Heart


2017年8月に行われた来日公演(ビルボード東京)を運よく観ることができ、その時のセットリストが代表曲ほぼ丸無視でリリース前の本作からの楽曲多めという尖った内容で非常にシビれたもんで、個人的にも待望のアルバムとなりました。自らエフェクターをいじりながら歌うスタイルに、サイケなVJとビルボードのラグジュアリーな空間とのギャップも含め、クリエイティビティに磨きをかけた素晴らしいパフォーマンスでした。ちょっと肩透かし喰らった感があった前作"The Golden Echo"を経て、3作目にして今の彼女のフィーリングに合致するスタンスを確立したような印象。
Skrillexとの共同プロデュースによる"Top of the World"を筆頭にダブステップとの相性の良さを見せつつも、実験的なサウンドと従来から持ち合わせているポップネスとのバランスが巧く保たれていて、シングル曲以外の新録曲だと"Recovery""Lightyears"なんかもうドンピシャ。アルバムリリース以降に発表されたDawn Richard("Version of Me")Snoop Dogg("Top of the World")とのコラボも必見。





5. MYSS KETA - UNA VITA IN CAPSLOCK


イタリア・ミラノより突如現れた覆面のフィメールラッパー。今年本国イタリアのUniversal Musicと契約し徐々に知名度を上げている彼女。メジャー1作目となった本作は、若干アングラ感さえも漂う謎めいたビジュアルの時点でもう満点な上に、アルバムタイトル曲"UNA VITA IN CAPSLOCK"に象徴されるようなダークでミニマルなトラックに乗っかるイタリア語のラップが呪文のように頭から離れない。様々なトラックメイカーとタッグを組み変幻自在のスタイルを見せながらも自身の声ひとつでの世界観をガッチリ固めてくるラッパーとしての魅力も充分。フェミニズムとも交差するシニカルな歌詞世界も面白い。
"MONICA""BOTOX"(タイトルの時点で優勝)などMVが出ている楽曲も多いので是非。





4. The Presets - Hi Viz


オーストラリアのエレクトロポップデュオによる4作目。まるでパーティーの事後に思い出す最中のおぼろげな記憶の走馬灯のように目まぐるしくスタイルを変える楽曲群は、カラフルでごちゃごちゃしたジャケットのアートワークがまさにぴったり言い当てているよう。同郷のアーティストPNAUなんかもそうだけど、豪州エレクトロ勢って実は結構ぶっ飛んだ人たちが多いのかな。前作"Pacifica"からの6年と言うブランクを一掃するように、アルバムの最後まで気を緩めずに"Untll The Dark"まで駆け抜けるようにフィニッシュする流れが気持ちいい。バラードソングなんてひとつも入ってません(確かに彼らにバラードっていうイメージが全く出てこない)。ただひたすらハードに踊らせてくれます。





3. Familjen - Kom


前作"Allt På Rött"から5年半ぶりのリリースとなった4作目。2014年に本国スウェーデンの人気番組"Så mycket bättre"シーズン5に出演したり(ちょっと意外に思ったけどすごく良かった)、その翌年の2015年にリリースされたTove Styrkeのアルバム"Kiddo"のプロデュースを手がけたりと、何気に話題に事欠かなかったここ数年。待望のアルバムとなりましたが、歌い出しのワードがそのままアルバムタイトルにもなっている先行シングル"Rök och speglar"や、のちにシングルカットもされた本作きってのキラーチューン"En gång till"など、アシッドにうねるシンセもメロディアスな歌モノも健在で、時代や流行に囚われない、まっすぐでひねくれた珠玉の楽曲が並ぶ最高のカムバック作を届けてくれました。彼の作品には欠かせないNinsun Poliを始めとした3名の女性ヴォーカルの客演陣が華を添えるようにアルバムの良いスパイスになってます。





2. SOPHIE - Oil of Every Pearl’s Un-Insides


6月に突如ドロップされた初のオリジナルフルアルバム(前作"Products"は編集盤的扱い)。2017年10月にリリースされたシングル"It's Okay To Cry"より本人歌唱+顔出しビジュアルでカムバック、続くブルータルなBDSM的世界観を伴う"Ponyboy"で覚醒モードに突入。さらに"Faceshopping"で自らの顔面を解体……と最早敵なし状態のSOPHIE嬢。アルバムでは前述のシングル群3曲で幕を開け、緊張感を湛えた静的なアンビエント/ドローンで固めた中盤を越え、突如挟まれる(みんな大好き)バブルガムベースアンセム"Immaterial"で一旦安心させておいて、ラストの"Whole New World/Pretend World"で怒涛の揺さぶりをかける暴力的なまでに美しい流れ。インダストリアル的質感の尖った音使いとの緩急がドラマチックに混ざり合い、ジャンルもジェンダーも飛び越えた稀代の名盤。





1. Cosmo - Cosmotronic


2018年最大のディスカバリーにして今年一番のお気に入り。1月にリリースされて以降、年中通して聴いてました。
CosmoことMarco Jacopo Bianchiはイタリア・ミラノ出身の男性アーティストで、2002年にインディーバンドDrink To Meのヴォーカリストとして音楽活動を開始。バンド自体は2017年に解散してしまいましたが、2012年の暮れ頃に始動したソロ活動は継続。通算3作目となる本作はイタリア本国のアルバムチャートで最高13位、トップ100に延べ30週にわたりチャートインするスマッシュヒットを記録しています。ツアーも軒並みソールドアウトになるほど人気の模様。イタリア語のポップスは本当にびっくりするほど今の今までノーマークでしたが、こんなにクールでイケイケなエレクトロ・ポップをやってる兄ちゃんがいるなんて……!と感動しました。
アルバムは歌モノポップス+フロアライクなインストナンバーの2枚組構成。大衆音楽からクラブシーンまで包括するような内容で、アッパーなトランス〜エレクトロハウスからパーカッシブなバレアリックサウンドまで縦横無尽。これ、イタリアどころか世界的にも全然通用するじゃないですか。どこを切り取ってもカッコイイ。自信を持ってオススメできます。聴いてください。


BEST OF 2018 PT.1 - INT’L ALBUMS (20-11)


BEST OF 2018 PT.1 - INT'L ALBUMS (20-11)




20. Auður - Afsakanir


若くからR&B/ヒップホップのプロデューサーとしての才覚を発揮し、2016年にカナダ・モントリオールで開催されたRed Bull Music Academyにも参加したアイスランド気鋭のアーティストの2作目。スカンジナビア圏の冷たく曇った空気感をどことなく漂わせる繊細でメロウな音像は、2013年にSónar Reykjavikで観たJames Blakeに触発されたというエピソードからも頷ける。全編アイスランド語の本作と、英語詞の前作"Alone"、路線は同じだけど言語が違うだけでだいぶ印象が変わるな。






19. How To Dress Well - The Anteroom


前々作"What Is This Heart?"とも、前作"Care"とも毛色が異なる実験作(本作を聴いた後に前作・前々作と遡って聴くとちょっと安心しちゃう)。グリッチの効いたハードな音使いがツボでした。特に"Hunger"のようなダンサブルなトラックが個人的にドンピシャです。ここ最近MVでの上裸率高いよね。





18. Little Jinder - Hejdå


スウェーデンのエレポップ女性SSWの4作目。Lykke LiやFirst Aid Kitなど有名どころが客演に名を連ねているのがちょっと意外だったけど、同郷ミュージシャンとの交友関係も広く着実にキャリアを踏んでいる印象。しかしアルバムタイトルにもなっている"Hejdå(さよなら)"でサビの歌詞に自身の名前(Lilla J)を出しながら「死んで自由になるべき」などと自分で歌ってて相変わらず後ろ向きな感じも健在で安心。 ここでもやっぱり"Deep City"のような四つ打ちトラックに体が反応しちゃう。





17. GusGus - Lies Are More Flexible


1995年結成のアイスランドのエレポップユニット(現在メンバー2名)の通算10作目。割とここ何作品かはずっと追っかけて聴いてたけど、今作は結構引っかかりのある曲が多かったかも。"Lifetime"で聴かせるアップリフティングなシンセのリフなんかちょっと懐かしい感じもして堪りませんな……(またしても四つ打ち)。写真や映像を見てるとメンバーの片割れの人がクロスドレッサーなところも気になったりする。音楽的にもHercules & Love Affairと割と近しいものを感じるんだけど、GusGusはそこまでqueerな印象でもないんだよな。





16. LCMDF - Sad Bangers


フィンランドヘルシンキの姉妹デュオ、実に7年ぶり(!!!)となる2作目。これまでもいくつかシングルを切ってたけど、前作がもっと前のことのように思えるくらいに懐かしい。先行シングル"Another Sucker"やハミングが印象的な"Glitter"に代表されるこの手のパーティーチューン系エレポップは、同じく北欧出身の女性デュオであるIcona Popに持ってかれちゃった感はあるけど、彼女たちの楽曲はそこまでアクが強くなくて聴きやすい。2010年代ポップスの王道を行くキャッチーさを持ち合わせつつも、アップテンポな曲も極端に陽に振り切れず、ちょっぴり切なさや翳りのようなものを覗かせる辺りにらしさを感じる。何しろ"Sad Bangers"だもんね。





15. Tove Styrke - Sway


世界デビュー作の前作"Kiddo"は個人的に(年間ベストに挙げるほど)めっちゃ好きだったけど商業的にはそこまでヒットにはならず。しかし本作で軌道に乗ってきた感があって古参的にはとても嬉しい限りです。全8曲(うち1曲はLordeの楽曲のカバー)でトータル26分。のちに新曲が1曲追加されたエディションが出るも30分未満、と言うコンパクトな構成に、楽曲アレンジも引き算的なミニマリズムすら感じさせるシンプルさ。とりわけミニマルな"On the Low"がシングル楽曲群を押しのけて一番好きだったりする。前作とは違ったベクトルのユニークさ。決して売れ線ではないけど、痒い所に手が届く感じ。オルタナポップクイーン街道まっしぐら。





14. Louis Cole - Time


Brainfeederと契約を結んだ鬼才Louis Cole、今年はKnower(ビルボード大阪)とソロ(京都メトロ)で彼のパフォーマンスを2回観る機会がありました。バカテクなドラミングの応酬で圧倒したり、真顔で妙なダンスを踊ったり…といったエキセントリックで変態的な側面がどうしても強くなりがちだけど、アルバム音源を聴くと全然穏やかだったりする。音楽的素養の下敷きもしっかりしてるし、きっと根は真面目なんだろうな。





13. Rebecca & Fiona - Art of Being A Girl


まずジャケが最高。2014年リリースの前作"Beauty is Pain"が割と攻めな姿勢の内容だったのに対し、本作はフェミニズムを内省的に掘り下げつつ昇華していったような内容で、アルバムタイトルの"Art"のニュアンスもおそらく「術(すべ)」とか「技巧を要する物事」の方が正解かも。そういえば2015〜17年の間(Party Hard期)もコンスタントにシングルやEPを発表してたけど、あくまでそれはそれって感じで、アルバムを出すときはきちんとひとつの作品としてコンセプトを固めた上でリリースしたいんだろうなと。トロピカルハウス以降のチルめな楽曲が大半を占める中、先行シングルにもなった切な系エレポップの"Need You"がダントツに良い。





12. John Grant - Love is Magic


楽曲(各曲のタイトルからして強め)・ビジュアル(ジャケが全てを物語っている)の双方で吹っ切れ具合に拍車をかけてきた4作目。5年前の"Pale Green Ghosts"と比べると本当に別人みたい。笑
…なんて思わせるほどにコミカル且つシニカルな悲喜劇のようなアルバムで、歌詞もストーリーテラーっぽい目線で読んでみると面白い。淡々としたテクノサウンドに熱のこもった語りが乗っかる"Diet Gum"なんか聴きながら笑っちゃった。あ、でもちゃんと(?)いつものJohn Grantなバラード曲もあるのでご安心ください。しかしこのいい意味でとっ散らかった感じ、歴代アルバムの中で一番好きかも。





11. Aseul - Asobi


韓国インディ音楽シーン期待の女性エレポップSSW。2015年まではYukari名義で活動しており、PLANCHAからアルバム"Echo"の国内盤が出ていたのでご存知の方も多いかも。改名後2作目となる本作は全7曲とミニアルバム的位置付けながら、セルフプロデュース能力の高さに裏付けされた粒揃いな楽曲が並ぶ良盤。沖縄で撮影されたMVが印象的な先行シングル"Sandcastles"をはじめ全体的に夏向きで爽やかなトーンで、風通しの良い透明感のあるボーカルとの相性もバッチリ。実は4月にMV撮影後に九州を旅行中のご本人にお会いする機会がありましたが、日本語も上手でチャーミングな方でした。


9 BEST JAPANESE ALBUMS OF 2017


REPOOOOORT BEST OF 2017 (PT.3)
9 BEST JAPANESE ALBUMS




9. Especia - Wizard


全曲再録+4曲の新録曲という大盤振る舞いを見せた解散直前の最後の置き土産がわりの本作。新メンバーながら女子高生とは思えない落ち着いた佇まいを見せていたミア・ナシメント嬢のスウィートなヴォーカルが堪能できる彼女のソロナンバー"Call me Back"や、メンバーに歌わせるには残酷すぎる位の歌詞が刺さる"Just Go"など、最後の最後に良曲をドロップしてくるなんて。いわゆる第1章は全く違う様相を見せていた3人体制のEspeciaでしたが、個人的には全然アリでした。最後のインストアライブで初めてハイタッチを体験し、その後ファイナルツアーにも足を運ばせていただきました。ありがとうエスペシア。





8. CHAI - PINK


新進バンドとしての初期衝動的勢いに溢れまくったデビューLP。ピンとくる、あるいはアンテナにひっかかる楽曲やミュージシャンのエッセンスをどんどん吸収して自らのサウンドに落とし込むスピード感とセンスにただただ舌を巻くばかりです。初っ端1曲目の"ハイハイあかちゃん"からShamir"On The Regular"を彷彿とさせるイントロとラップが炸裂してて痛快。コンプレックスを武器にあらゆるものを肯定する愛と欲望のピンク色を掲げた"NEOかわいい"は昨今のフェミニズム・ムーヴメントにすらも風穴を開けてくれそう。





7. Satellite Young - Satellite Young


現代が生んだネオ歌謡シンセポップトリオのファースト作。これまでにリリースされたシングル曲を網羅しており実質ベストアルバム的ボリュームです。新機軸なミッドチューン"AI Threnody"(=人工知能セレナーデ)や、アルバムの締めくくりを飾る"愛、おぼえていますか"的なバラード"Melancholy 2016"など新録曲も粒ぞろいなシングル級の出来栄え。個人的には特にbrinqとのコラボレーションとして発表された"Nonai Muchoo"の初期move感にやられました。
また現代のテクノロジーを巧く絡めたコンセプチュアルな歌詞も特筆すべきポイントで、12月に早くもドロップされたニューシングル"Modern Romance"でもそのフューチャリスティックな世界観を堪能することができます。





6. 藤井隆 - light showers


CFまとめティーザー映像は本っっっ当にずるい。反則。CDのパッケージにも全曲タイアップ風のシールが貼られていて本当に徹底してます。こうしたネタを仕込みつつ肝心の楽曲でも90sポップスのリバイバルの波が来ている中で頭一つ抜きん出たクオリティを誇る耳馴染みの良いダンスナンバー満載で、CDバブル全盛期のJ-POPを聴いて育った世代(1989年生まれ)の身としてはもう本当に、良い時代が来たな……と心の中で静かに感涙しながらリピートしてしまいます。
また外仕事として発表されたDÉ DÉ MOUSEとのコラボナンバー2作("エチケットマン"と"養命酒からだコトコト体操")でも新たな化学反応を起こしていて、こちらも非常にツボでした。





5. 脇田もなり - I am ONLY


ソロ転向後の精力的な活動ぶりとリリースペースにはビックリですが、Especia時代からピカイチのヴォーカルを聴かせていただけに、こうしてまた彼女の歌声を聴くことがきるのは非常に喜ばしいことです。昨今では星野みちるを筆頭にガールズポップにも力を入れている老舗インディー・レーベルVIVID SOUNDからのデビューということで、楽曲にも恵まれ理想の着地点。間違いないっす。結構ソウルフルというか、いい意味でクセのある声質ですが、福富幸宏プロデュースの歌モノハウス"I'm with you"のような軽やかなテイストの楽曲にもフィットしていて、新たな表情を垣間見ることもできました。





4. YMCK - FAMILY SWING


ジャケット周りのデザインを担当させていただいた身としては、通算7作目のアルバムにしてキャリアハイを更新するような素晴らしい作品と関わることができて誠に光栄です。怪盗モノと言うストーリー仕立ての世界観に加え、過去作品にも登場したスウィンガーズの登場、そして初期の隠れた名曲"Spy Me"にリアレンジを施され"スリル・ミー"として収録されたりと、古くからのファンにとっても嬉しい充実っぷり。ライブでのコール・アンド・レスポンスがご機嫌に楽しい"イェイェ大作戦"から新境地のワルツナンバー"哀愁のスウィンガーズ"まで、キャラクターによるヴォーカルスタイルの使い分けもバッチリ。そして特筆すべきはサウンド面でのこだわり。quad(luvtrax)の監修によるマスタリングによってシンプルな音使いの8bitサウンドに一層の広がりと深みが与えられています。チップチューンとはいえ侮るなかれ。





3. 柴田聡子 - 愛の休日


2016年の夏に友人に連れられライブを観て以来ずっと聴いてます(今年の夏もライブを観に行った)。普段あまり弾き語り系SSWを聴くほうではないのに、どうして不思議と頭から離れない。今年の一曲を選ぶとしたら真っ先に"遊んで暮らして"を選ぶでしょう。それくらい大切な曲になってしまった。なんならこのアルバムを無人島に持って行ってもいい。





2. 土岐麻子 - PINK


今年の邦楽界からはふたつの重要な"PINK"と言う作品が登場しました。若さと勢いのCHAIと好対照を成すベテランシンガー土岐麻子の"PINK"は「現実を塗り変える想像力の色」として、どちらも違うベクトルで生々しさがあって面白い。《ピンクの血潮の/素肌の下に/なにかがあるなら》と答えを求める人肌の温度感とその内側にある欲望の色でもあるのでしょう。"PINK"や"SPUR"と言った従来の土岐麻子像をより拡張するような楽曲から、ブリッジ〜大サビにかけるドラマチックな展開にゾクゾクする"Rain Dancer"までキラーチューン満載。プロデューサーであるトオミヨウとの驚くほど抜群すぎる相性によって打ち立てられた2010年代ネオ・シティ・ポップの金字塔。





1. ベッド・イン - TOKYO


地下セクシーアイドル、ベッド・インの2作目。こんなにハイペースで新譜を出してくるとは予想外でした。ギラッギラにキメた前作"RICH"とはまた異なるベクトルを打ち出し、バブル時代だけでなく(それこそ藤井隆の新譜と同様に)90年代中盤のCDバブル全盛期にまでアプローチ。世界観を拡張しながらやまだかつてない彩りで飾られた楽曲たちに思わず夢がMORI MORI……ワードプレイ炸裂の歌詞も相変わらずで笑っちゃう。 "シティガールは忙しい"でバブル時代のアーパー系キラキラ女子を演じる一方、"Concious〜闘う女たち〜"や"離れていても・・・"で泣かせにかかって来るもんだから下半身がハートカクテル状態必至。ボディコンロックを標榜している彼女達ですが、個人的には前作の"C調び〜なす!"や"白黒つかない"のようなコミックソングこそがベッド・インの真骨頂だと思っているので、アルバム本編が"ジュリ扇ハレルヤ"でシメ括られるところにグッと来ました。「クレヨンしんちゃん」(ロンモチで映画版)に綺麗なおねいさん役で出演する日も遠くないはず。




9 BEST ALBUMS OF 2017 (EUROPE/US)


REPOOOOORT BEST OF 2017 (PT.2)
9 BEST ALBUMS (EUROPE/US)




9. The Sound of Arrows - Stay Free


スウェーデンのエレクトロポップデュオ、実に6年ぶりの帰還となる2作目。ドリーミーなSFファンタジー的世界観は健在。前作が宇宙旅行シリーズならば、本作はジャケットにも表されるような桃源郷のようなイメージ。すべてを肯定するような優しさと包容力を以って聴き手を勇気付けるような節すら感じます。《心配しないで/音楽が鳴ればすべて忘れられる/明日になればきっと良くなるから》と歌われる"Don't Worry"なんかもう特に、この疲弊しきった現代を生きるすべての人に聴いてほしいくらい。





8. Jessie Ware - Glasshouse


UKの女性SSWの3作目。結婚・出産と彼女の人生における大きな変化とリンクするように作品もいい感じに燻されきて、本作でまたひとつの最高点に到達したように思える名盤。特に"Selfish Love"のムード歌謡的なイントロの枯れた感じなんかもう堪りません。"First Time"も個人的にラブソング・オブ・ザ・イヤーに認定したいくらいに情感てんこ盛りで、前作で言うところの"Say You Love Me"を軽々と超えてきておったまげた。またアルバム収録曲のうち(現時点で)5曲がアコースティックバージョンとしてデラックス盤やシングルとして配信されていて、そちらも必聴です。





7. Cashmere Cat - 9


ノルウェーのトラックメイカー待望のファーストLP。程よいビート感と上物のおどけたような音使いもさることながら、何よりも叙情的なメロディーが琴線に触れまくって鬼リピ状態でした。MØとSOPHIEをフィーチャーしたタイトル曲"9"に、もはやお馴染みのコラボとなったAriana Grandeとの"Quit"(この2曲が特にお気に入り)など、特に女性ヴォーカルとの相性が抜群に良いです。





6. Gavin Turek - Good Look For You


たまたま入店した地元のスタバでヘビーローテーションの如く流れていた音楽が気になって数曲Shazamで調べてみたら全部彼女の楽曲だった、と言うことがあって、その翌日にはタワレコに走りこちらの日本独自企画盤のアルバムを手にしていました。(それから後になって彼女がTuxedoのバックで歌っていたとびきりキュートなお姉ちゃんだったことを知るという……)
USのポップス界がことごとく世相を反映するかのようにダークサイドに堕ちたようなアルバムばかりだったので、まるで一服の清涼剤のようにゴキゲンにさせてくれます。サウンド、ヴォーカル、ビジュアルの三拍子が完璧なまでに出来上がっていてもう言うことなし!





5. Thundercat - Drunk


これもどこかのオシャレな文具屋さんとかで流れていてすぐにShazamを立ち上げた記憶が……。しばらくインターネットで音楽を漁っていたけど、純粋に街中やラジオで流れている音楽にも耳を傾けてみるとやっぱりいい音楽に出会えるもんだなあ。ベースプレイの手数に思わず聴き入ってしまうんですが、"A Fan's Mail (Tron Song Suite II)"のクスッときてしまうような歌詞にいつも脱力してしまいます。《猫の暮らしは最高さ ニャオニャオニャオニャオ》と訳詞の語感もバッチリすぎてもう。可愛いすぎ。





4. Ramona Rey - Ramona Rey 4


前作より6年ぶりのリリースとなったポーランドの歌姫の4作目。前作リリース以降は現地の大学院に進学し声楽(オペラ)を学んでいたようで、元来持っていた独自のヴォーカルスタイルに磨きをかけ堂々たるカムバックを果たしてくれました。エキセントリックな一面を見せたかと思えば、嫋やかに語るような歌い口になったりと、巧みなまでに目まぐるしく表情を変えていきます。またそれらをバックで支えるミニマルな電子音も控えめながらも無駄のないプロダクションでアルバムの完成度を引き上げていて、過去3作と比べても格段の仕上がり。もっと注目されるべき逸材。





3. Ivan Dorn (Иван Дорн) - OTD


ウクライナ出身の男性シンガー、初の全編英語詞に挑戦した3作目。前作収録のDisclosure的な90sUKガラージリバイバル的アプローチの楽曲がツボにハマりすぎて動向を追いかけていましたが、ここに来て世界に照準を当ててきました。先行シングルの"Collaba"アメリカ国旗がプリントされた衣装と言う分かりやすい出で立ちで登場したと思えば、女装姿で暴れまくるという予測不可能な動きを見せていて、このヤンチャな姿こそが本来の彼のスタンスと言うかテンションなんだろうなと何だか腑に落ちた。個人的に今までアイドル歌手的な立ち位置のイメージが強かったので、そこを良い意味で裏切ってくれました。ジャズやファンクを飲み込んだ巧みなサウンドメイキングも出色の出来。この人ももっと世界的に注目されていいはずなんだけどな。。。





2. Ronika - Lose My Cool


2014年の個人的年間ベストだった前作"Selectadisc"と肩を並べるクオリティと安定感を誇る2作目。全曲ラジオフレンドリーと言いますか、どれもシングルが切れそうなほどにキャッチーで、実際に収録曲の中からミュージックビデオがいくつも制作されていて、気合いの入れようが窺えます。ダウンテンポでチルアウトな趣の"Dissolve"やラッパーのSwishaをフィーチャーした"Late Night Radio"辺りでは新境地を見せつつ、シンセサウンドをふんだんに盛り込んだポップス中心の前作と比べるとより肩の力を抜いて制作されたような風通しの良さを感じます。





1. Jeans for Jesus - P R O


(レビューはこちら) 今年ちゃんと記事として書いたの、このアルバムだけだった……。
文句なしの1位です。スイス・ベルンのオルタナ・ポップ・ユニットの2作目にして(まさかの)メジャーデビュー作。アルバムタイトルにもあるように、メジャー進出によるプロのミュージシャンとしての矜持を証明してみせたようなフルボリュームの名盤です。