Album of the Year 2012 (10-1)

お久し振りです。

忘れ去られた頃に今年の私的ベストを年の瀬にかけて書き記していきたいと思います。
まずはアルバム十選から。




10. The xx - Coexist

本作が全英アルバムチャートで1位を記録したという事実は、(日本人としての)自分にとって非常に興味深いです。
このような音楽が大衆に受け入れられるような国に憧憬の念を禁じ得ません。
ともすれば退屈な作品になりかねないシンプルな音数で、これだけ深みのある音像を出せるのね…と、つい聴いてしまいます。



9. iamamiwhoami - kin

2009年末よりYouTubeでのバイラルマーケティング等様々なメディアを巧みに利用した謎多きプロモーションで世界中で物議を醸したiamamiwhoamiですが、Jonna Leeを中心としたこのプロジェクトの詳細が徐々に明らかになってきた今なお、そのスタンスを崩すことなく散発的なリリースに加えライブ活動も行なうようになり、今後の展開も気になる所。ちなみに来年6月には初期に発表した楽曲をコンパイルした"bounty"をリリースすることが既にアナウンスされています。
付属のDVDも含め、ひとつのメディアアートとして鑑賞できる正真正銘の"作品"、です。



8. Niki & the Dove - Instinct

昨年末にSub Popと契約、そしてBBC Sound of 2012で第5位をマークするなど、躍進の年となったスウェーデンのインディートロニカ系デュオによる1st。
収録曲のうち過去にリリースされたEPからの既発曲が多くを占めるも、改めてアルバムとして聴いてみると"1stにしてベスト"な粒揃い感。
そして"The Fox"は今年のMV of the Yearと言ってもいいくらい何度も繰り返し観ています。楽曲の言い知れない不思議な世界観をリスナーの印象を超える形で視覚化したような映像です。



7. The Girl and the Robots - Parallel Universe
(女孩與機器人 - 平行宇宙)

台湾のエレクトロポップ3人組バンド(女性vo.+男性シンセ×2)の2ndアルバム。
BBCで2007年に放映されたドキュメンタリー"Parallel Worlds, Parallel Lives"にインスパイアされて制作されたというコンセプチュアルな作品。
そして初回盤とiTunes版に付属しているリミックスアルバムではI Am Robot And Proud, 李雨寰, Dexpistols, スグル・ヤマモト™(※日本人ではない)など、アジア圏で活躍するアーティストやDJを集めており、なかなか豪華。
インディーズながら政府から楽曲制作の助成を受けている(文化事業のうち流行音楽にも力を入れているらしい)ということもあり、非常に力の入った一枚です。
楽曲に関しては若干周回遅れ感は否めないながらも、日本でも受け入れられそうなポップネスを持ち合わせている。ボーカルの人はルックスも歌唱もキュートなので日本でデビュー出来てもおかしくなさそう。この手のバンドは日本にいるようでいないような気がするなあ。
インタールードでcapsuleの"Feelin' Alright"のイントロ部分をサンプリングしている(多分)辺り、少しは意識しているのかもしれない。



6. Zowie - Love Demolition


ニュージーランド出身の女性シンガーといえば、Gotyeとの共演で注目の的となったKimbraの活躍が目覚ましいですが、こちらも期待の新星となり得るライオットガールZowie待望の1stアルバム。
2010年にシングル"Broken Machine"でデビューした頃には『NZのLady Gaga』などと称されておりましたが、もう少しパンキッシュだったり、ニューウェーブ的な側面もあったりして、その辺りはNine Inch Nailsをフェイバリットに挙げるだけのことはあるなあ。あるいは彼女がドラマーの顔を持っているということも由来しているのかもしれない。
…といった具合で、エレクトロポップだけに留まらない彼女の音楽的背景が随所に反映されたバラエティ豊かなアルバムになっています。もっと注目されてもいいと思うんだけどなあ。



5. Þórunn Antonía - Star-Crossed

アイスランドが産んだ正統派エレクトロポップの歌姫(英語表記はThorunn Antonia)の2ndアルバム。
1stアルバムから実に10年、その間いくつかのバンド活動や他アーティストとのコラボレーションを経てソロシンガーとして再始動。
今年のジャケ買い大賞はこれで良いと思う。美しい。
全体的に80sフィーリングな北欧ポップで、この手の女性シンガーはつい最近まで食傷気味だったはずが、波があるのか結局好きで聴いてしまっていたという罠。



4. Totally Enormous Extinct Dinosaurs - Trouble

読みは "トータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズ" です。略してTEED。UKオックスフォード出身のシンガー/DJのOrlando Higginbottomによるソロプロジェクト。2008年より活動開始。
「草食系エレクトロ」とか言ったら怒られそうですが、ボーカルスタイルもルックスもどこか控えめで(衣装は全然控えめじゃないけど…)、形容するにはわりとしっくり来るワードだなあと…。音の方もフロア映えしつつもうるさ過ぎないスマート(しかしよく聴いてみると変態アレンジ)なEDMという印象で非常に耳触りが良いです。



3. きゃりーぱみゅぱみゅ - ぱみゅぱみゅレボリューション

多くを語るまでもなく、中田ヤスタカによる楽曲プロデュースの妙と、強烈なまでのビジュアルアプローチと、彼女自身の持つキャラクターが絶妙なバランスで構築された紛う事なき名作。
付け睫毛、キャンディー、体温計、待ち合わせ、バイト…と、中田ヤスタカが歌詞で取り上げるトピックの着眼点も評価に値する。何かしら特別なものを欲したり望んだりするわけでもなく、何気ない日常の中に幸せを感じることができる。そんな日々がずっと続くと良いな、と思わせる。だって、両手を叩くだけで気持ちが明るくなるんだもん。単純明快。
"みんなのうた"の最後のフレーズは、まるでこのアルバムの真理のように聴こえます。



2. Icona Pop - Icona Pop

スウェーデンの女性2人組シンガー/DJのデビューアルバム。2010年結成。Kitsuneのコンピレーションアルバムへの参加等でじわじわと注目されていましたが、今夏リリースされたシングル"I Love It"がスウェーデン国内で最高位2位のスマッシュヒットを記録し、これをきっかけに一気にブレイク。
同じくスウェーデン×女性×2人組の方程式といえば、昨年アルバムをリリースし、今や世界的売れっ子DJにのし上がったRebecca & Fionaが記憶に新しいですが、彼女達もこれに続くどころか追い越しそうな勢いです。
昨年までのシングル/EPでは、8bit系の音色を使った楽曲("Sun Goes Down", "Nights Like This" あたり)が主なスタンスだったようですが、ここ最近は一気にエレクトロ系のパーティーチューンで勝負を掛けてきてます。
そして何よりの魅力として耳に残るのは、2人の突き抜けるようなユニゾンのボーカルスタイルでしょう。絶妙〜に心地良いです。




1. Marina and the Diamonds - Electra Heart

祝・全英初登場1位 (売り上げは良くなかったけど)!
去年の秋頃にリリースされた今作のパイロット的楽曲である"Radioactive"のMVを観た時はRihannaの後追いにしか見えず、「あーやっぱしそういう方向にいっちゃうんだー…」と半ば落胆してしまいました(それでも嫌いになれずむしろ聴き込んでしまうファン心理)。
ところがどっこい、アルバムの全貌が明らかになるにつれて、彼女は敢えてこのような流行の音に乗り、派手なビジュアルを施すことによって、ひとつのキャラクターを"演じている"のだというコンセプトであることが窺えて納得。ある意味挑戦的な作品を2枚目に持ってきたなあ。
特にブリーピーなエレクトロチューン"Primadonna"の楽曲やMVは、元々持っている本人のコケティッシュなキャラクターがむしろ良い方向に働いてて、USデビューも果たした彼女の挨拶代わりとしては充分なインパクトを持つ1曲ではなかろうか。
…と、一聴すると全体的に華美な印象ですが、根暗系バラード"Teen Idle"や"Starring Role"辺りはその中でアンチテーゼ的ポジションを果たしているようでなかなかの好対照。
デラックス盤のボーナストラックや、US盤収録の新曲"How To Be A Heartbreaker"(良曲!)も含め、マリーナ嬢の新たな魅力("Electra Heart"という彼女の第二の人格)を存分に引き出した本作が今年のナンバーワンです。大好きっす。