ALBUM OF THE YEAR (10-1)

[:W475]




【BEST OF 2013】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
3. TRACK OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )


10. Marsheaux - Inhale


ギリシャのエレポップ女子デュオの4作目。トラック自体の基本的な方向性は前作"Lumineux Noir"の延長線上にあるような厚みのあるエレクトロサウンドですが、今作においては特に、対照的な声質を持つ2人のボーカルのバランスの良さが耳に残りました。前作がだいぶ「攻め」のアルバムで、個人的に大傑作の名盤でもありましたが、そこからちょっと肩の力が抜けたような、アルバムタイトルにもあるように、一息ついて新たな空気を吸い込んだようなフレッシュさを感じさせます。
そんな彼女達も今年でデビュー10周年。来月にはベストアルバムもリリースされるので、初めての方は是非そちらも合わせて聴いて頂きたいです。
Inhale (YouTube)




9. HAIM - Days Are Gone


LAの3姉妹バンド…まずプロフィールのお触れ書きの時点で既にずるい。次に3人揃って長髪という印象的なビジュアルもずるい。そしてバンドサウンドながら90年代のR&Bのフレーバーを多分に含んだ楽曲群、いやあ、これまたずるい。(褒めてます)
Jessie Wareが制作に関わっているタイトルトラック"Days Are Gone"のようなバンド的ではない楽曲や、"Don't Save Me"辺りの、この3人だからでき得る特徴的なコーラスワークも聴いてて面白いです。筆者はゆとり世代なので"The Wire"を聴くとどうしても海外ドラマ『フルハウス』のOP曲を思い出してしまいますが、イメージとしては概ね間違いないです。全体的に晴れやかでカラッとした空気の一枚。
The Wire (YouTube)




8. CHVRCHES - The Bones of What You Believe


グラスゴーの3人組バンドCHVRCHESBBC Sound of 2013繋がりで何かとHAIMと並んで紹介されることの多いバンドですが、こちらはシンセサウンドが主体で、ボーカル女子(魔性の可愛さ)+サンプラーを操る2人の男子という組み合わせ。もうね、この写真とか、反則。
日本でもサマソニ出演に始まり、NHKの番組で六角精児氏に激プッシュされたり、FMラジオやCSでバンバン曲が流れてたりと結構な推され具合。来年はぜひ単独来日公演をお願いしたいところです。
シングルカットされた"The Mother We Share"や"Gun"はもちろんですが、個人的には男子がボーカルを務める"Under The Tide"や、New OrderParallelsあたりを彷彿とさせるダークでシリアスな"Science/Visions"辺りが非常にツボでした。
Gun (YouTube)




7. Sally Shapiro - Somewhere Else


"スウェーデンが生んだ21世紀型イタロディスコプリンセス"ことSally Shapiroの4年ぶりとなる3作目。ジャケットに騙されて聴いてみると、ビートの効いたエレクトロサウンドにウィスパーボイスが乗っかるというスタイルで、ギャップ萌えを体現したアルバムになっています。泣きメロが冴える哀愁系ディスコチューンからアーバンなエレクトロファンクまで縦横無尽です。
飛び抜けて可愛いわけでもなく、かといって歌唱力があるわけでもないのですが、どこか不思議なベールに包まれたようなミステリアスな魅力があります。《歩道から見上げるといつも洋館の2階の窓際で佇んでいて、たまに庭先で花に水をやる姿を柵越しに見かけるけど、外出している様子を一度も見たことがない少女》的な(長い)。
実際、彼女の素性はほとんど明らかにされておらず、ライブも基本的に行なわないスタンスで、アーティスト名も芸名(というよりは、彼女とプロデューサーのJohan Agebjörnによるプロジェクトという位置付け)のようです。スウェーデンは楽曲のクオリティだけでなく、こういった印象操作(?)が本当に巧みです。見せ方上手。
If It Doesn't Rain (YouTube)




6. きゃりーぱみゅぱみゅ - なんだこれくしょん


コマーシャル・ポップの究極体、ここに極まれり。これだけタイアップ先行型の楽曲がてんこ盛り(というか全体のほぼ9割)なのも逆に潔いというか、ポップアイコンたる彼女の今の姿を象徴しているようです。インパクトが大きい分、非常に刹那主義的なアルバムでもあります。現代日本の消費社会、ひいてはジャパニーズ・カワイイ・カルチャーの権化としてとんでもないスピードで"消耗"されつづける彼女の向かう先は果たして一体どこなのでしょうか。
にんじゃりばんばん (YouTube)




5. Toro y Moi - Anything In Return

何故だか分かりませんが、トロちゃんのアルバムは一枚まるっと通しで聴くと本当に良い。と言っても決して個々の楽曲が弱いわけではなく、(前作もそうでしたが)曲順などアルバム全体の調和が絶妙なバランスで取れているという事だと思っています。あと今作に関しては、ダンサブルでキャッチーなトラックが増えた点が個人的にかなりツボでした。日常に寄り添うようなラウンジ的側面(歌モノだけど作業用BGMとしてもかなり優秀!)を持ち合わせつつも、ふわふわとした摩訶不思議なサウンドプロダクションで聴き手をどこかへ連れて行ってしまうような一枚。
Say That (YouTube)




4. John Grant - Pale Green Ghosts


(レビューはこちら)
女性シンガーを聴く割合が多い中で、こういった素晴らしい男性シンガーに出会えたことはかなり嬉しい。
ちなみにレコーディングは主にアイスランドで行なわれたそうで、確かに荒涼とした極北の大地のような空気感をどことなく帯びているように思えます。
Pale Green Ghosts (YouTube)




3. Little Boots - Nocturnes


前作"Hands"から4年、かなりの間を空けてのリリースだったこともあってか、売り上げ的には全く振るわず(全英チャート最高45位)。楽曲も全体的にシックで落ち着いたトーンでまとまっており、一聴するとかなり地味な作品ではあるものの、彼女らしいポップネスを保ちつつも一皮剥けた印象です。前作が色彩を帯びた煌びやかなネオンライトならば、今作は静かに光る夜の街灯のような、タイトル通り"夜のアルバム"です。
2009年にBBC Sound ofで第1位を獲得し華々しいデビューを飾った彼女も、元々は自宅の一室でTENORI-ONを弄る宅録少女。リリースに際するメディアでのインタビューでも、世間の求めるポップアイコンとしてのイメージと自らのやりたい事との齟齬があった旨の発言をしており、この数年でかなりの葛藤があったことが窺えます。そこから自らのレーベルを立ち上げ、新たなスタートとしてリリースされた一枚ということで、今後も彼女らしく息の長い活動をしてくれることを期待します。
Satellite (YouTube)




2. Perfume - LEVEL3

(レビューはこちら)
中田ヤスタカによる楽曲や昨今のメディアアート/テクノロジーとの邂逅ももちろん評価に値するのですが、何よりも、レーベルを移籍したことにより、きちんとした形で世界中に彼女達の音楽をパッケージングして届けることができる環境が整った点が個人的にはかなり凄いことなのではないかと思います。昨今のいびつで閉鎖的なJ-POP市場の中でこれが出来ているのは本当に素晴らしい。
ワールドツアーに関してもきゃりーぱみゅぱみゅに先を越されてしまいましたが、逆にそれが良い追い風となったようにも思えます。
チームPerfumeが如何なる形に進化し変容を遂げようとも、それらのプラットフォームとして真摯に、変わらずに、表現し続ける彼女達の魅力に改めて気付かされた一年でした。
1mm (YouTube)




1. Disclosure - Settle

今年は間違いなく彼らの年です…とまで言うのはちょっと大袈裟かもしれませんが、年明け早々に公開された"White Noise"で既に全部持ってかれた感はあります。来日公演に行けなかったのが本当に残念で仕方が無い。
今年の音楽シーンのキーワードのひとつともいえる「90年代リバイバル」を、10代20代の若者が(温故知新的な再解釈を以て)やってのけたという辺りも非常に面白く、またこういった音楽がチャートの上位に食い込むようなUK音楽シーンの懐の深さ(?)も窺えるような作品でもあったように思えます。ヨーロッパはクラブカルチャーやダンスミュージックが割としっかりと根付いてるんだよなあ…と、日本との温度差のようなものも同時に感じてしまいます。
あと、個人的にEDMに対してかなり食傷気味なところがあったタイミングでの彼らの登場だったこともあって、そう!これ!今聴きたいのはこういうのだった!という具合で上半期はこのアルバムにひたすら感動しまくってました。笑
デビュー作でここまで凄いのを出してしまったから次大変だろうなあ…と思いつつも、UK音楽シーンを担う存在として期待しちゃいます。大好きです。ほんと。





【BEST OF 2013】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
3. TRACK OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )