FEMM (Far East Mention Mannequins)

FEMMに見る《エレクトロ×女子×デュオ》の方程式



ここ最近、歌って踊る謎多きエレクトロマネキン女子デュオFEMM(Far East Mention Mannequins)に夢中。なんですが、日本は東京発のプロジェクトにもかかわらず日本よりも海外(のJ-POPファン)の反応の方が圧倒的に多いような気がします。というか、もはや完全に邦楽リスナー置いてけぼり(そもそも眼中になさそう)の様相ですごく良いです。
(でも実際は街中でのゲリラパフォーマンス敢行やライブ活動など昨年の秋頃からじわじわと色んなメディアに出ているし、MVでリリックビデオ風に歌詞を載せる辺りにもどこか親切心を感じます。)
楽曲制作に関しても積極的に海外の作家を起用し、歌詞も全編英語で、発音もそれなりに良い(これは個人的にかなり重要)。
MTV IGGYのARTIST OF THE WEEK(8月第2週付)として取り上げられたりインタビューを受けたりなど、海外メディアからの注目もちらほら。


楽曲リリースは配信のみではありますが、4月にEP"Astroboy"でデビュー。以降いくつかのシングルが出ていますが、YouTubeではシングル化されていない楽曲を含め既にアルバム1作品は出せる程の楽曲のMVが公開されています。映像制作や振り付け、そしてセーラー服やメイド服といったコスチュームに至るまで、気鋭のクリエイターとタッグを組んだビジュアルアプローチは毎回抜かりなくハイクオリティだったりします。ここまでハイペースだとかなりの予算がつぎ込まれているのでは…と思ったのですが、そこはやはりavex傘下・maximum10レーベルの手腕の成せる技なのでしょうか。


似たケースとして、2010年代に入ってからはスウェーデンのマルチメディアなプロジェクトiamamiwhoamiYouTubeバイラルマーケティングをきっかけに話題になりましたが、FEMMも同様に様々なメディアがクロスオーバーするエッジの効いた作品をどんどん世に送り出して欲しいところです。(CD、出ないかなあ…もちろんDVD付きで。)


8/27リリースの新曲"Dead Wrong"ではラテックスの着物に身を包み、時折人間らしい仕草を見せつつも、シンボリックな振り付けやポージングは流石マネキン。まばたきをほとんどしないので、半端ない目力を感じるのも印象的。



8/29に公開された"The Real Thing"のMVでは、Perfume "Spring of Life" 辺りの系譜にも似たアンドロイド的な路線に少しだけ寄せてきています。


その他にもピンクレディーの名曲をフリースタイルなエレクトロで大胆にカバーした"UFO"や、Twerkingの動きを振り付けにフィーチャーした"Fxxx Boyz Get Money"など、一曲一曲全部紹介したいくらいの勢いで面白い作品を立て続けに発表しています。
個人的には泣きメロ炸裂な切な系エレクトロ"Kiss The Rain"や中毒性の高いサビが印象的な"Wannabe"、あるいは"Kill The DJ"辺りが好きです。



兎にも角にも、このFEMMという謎めいたプロジェクトに突如として巻き込まれてしまったからには、オフィシャルサイトでの面白い仕掛けも含め、今後の動向に注目せざるを得ません。
あなたも今日からエージェント。


http://femm.jp/
https://www.facebook.com/FEMMWorld






さて、《エレクトロ×女子×デュオ》の方程式については過去に何組か取り上げていますが、FEMMもその系譜に漏れず素晴らしいので、改めていくつか女子デュオを引き合いに出してみることにします。
1990年代に隆盛をきわめたユーロポップ界隈にもShampoo, ME&MY, smile.dkといった女子デュオがいました。あるいは日本で言えばドール的な佇まいで一世を風靡したWinkが元祖でしょうか(他にもいるかもしれない)。今回は2000年代以降に絞ってご紹介。

CLIENT


徹底的なコンセプチュアル志向で言えばUKのエレクトロクラッシュユニットCLIENTがいます。制服、軍服、ボンデージなどフェティシズムフェミニズムの交差する示唆的なビジュアルは、無機質な電子音楽と相性抜群。当初はDepeche ModeのAndrew Fletcherによるプロデュースで覆面ユニットとして2003年にデビューし、数回のメンバーチェンジを経た最近は以前ほどにコンセプトでガチガチに固めたスタンスではないようですが、CLIENT A、CLIENT Bといったメンバーの呼称は変わらず引き継がれているようです。


Cat5


スウェーデンヨーテボリ出身のHannaとChristinaによるエレポップデュオ。2000年代の中頃に活動しており、アルバムリリースは1枚のみ。
双子のように瓜二つに揃えられたビジュアルに、80年代のシンセポップ〜90年代のガールズポップを現代に受け継ぐ楽曲。非常に秀逸なプロジェクトでした。もっと活動して欲しかったなあ…
同じく2000年代中盤のスウェーデンからはWest End Girlsという、名前の通りPet Shop Boysのカバーを専門とした女子デュオが出てきたりもしています。


KAMON!!!


こちらはウクライナのデュオ。攻撃的でサイバーチックなビジュアルと厚みのあるエレクトロサウンドは若干FEMMとも通ずるものがありますが、彼女達はもう少し奇抜でパンクで強め。


NikitA


ウクライナの女性デュオといえば他にもNikitA(現在は3人組)もいますが、こちらはより開けっ広げに振り切れたセクシー路線です。真っ裸でショッピングモールを練り歩くMVは鉄板でしょう。


Rebecca & Fiona


FEMMの"We Flood The Night"はEDM女子ど真ん中なアンセムですが、これを聴いた時に彼女達のことをすぐに思い出しました。バービー人形をモチーフにした"Jane Doe"はFEMMのマネキン路線ともリンクします。ビジュアルの方向性で言うと、衣装だけでなく特に小物・小道具類に気を使っているような印象です。
年々ビジュアルが派手になってきていますが、デビュー曲にあたる"Luminary Ones"は日本の全ての森ガールがひれ伏すべき世界観で、こちらも特筆に値します。
女性DJデュオは彼女たちの他にも、家政婦をモチーフにしたコンセプチュアルなHousewives(現在は個々で活動中)や、日本でも人気のあるIcona PopNervoなど、フロア映えする面々ばかり。


Charisma.com


日本からはこんなデュオも出ています。OLの顔を持つ1MC+1DJから成るカリスマドットコム。音楽性はFEMMと同様にエレクトロ路線ですが、現実の社会や日常、世間に対してアンチテーゼを掲げるスタンスがこのユニットの大きな軸となっており、バーチャルな世界観を以てバイラルに拡散させるタイプのFEMMと好対照です。



いずれもサウンド・ビジュアルにおいてFEMMと共通項を持っていそうなデュオをかいつまんで紹介しましたが、以上に挙げたデュオとFEMMとの決定的な違いは「踊る」ことでしょうか。
FEMMを特徴付ける大きな要素としての振り付けは左(HIDALI)によるもので、マネキンと人間、無機と有機を行き来するような不思議な動きは、個人的に彼女たちの最大の武器のように思えます。
なのでやっぱり映像作品をですね…CDと抱き合わせでですね…出して欲しいなと思います。