ALBUM OF THE YEAR 2014 (20-11)




【BEST OF 2014】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
3. TRACK OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )


20. Little Jinder - Little Jinder

[:W475]


スウェディッシュエレポップ女子、今年も相変わらず強し。2000年代後半より活動を続けているLittle Jinderですが、今年メジャーデビューを果たし、ひとりRebecca & Fionaのような派手目なビジュアルに変貌を遂げています。スタイリストの人が一緒という理由が大きかったりもしますが、その縁なのかRebecca & Fionaを客演に迎えた"Vita Bergens Klockor"が先行シングルとしてリリースされました。
とはいえアルバム全体において派手な要素は皆無に等しく、90年代のR&Bの影響や、昨今のトレンドのひとつとして挙げられるビートミュージック的要素も垣間見えつつ、ささやき系ボーカルの映える浮遊感を重視した音作りの一枚。これまで英語詞で楽曲を発表していましたが、今作は初の全編スウェーデン語で綴られているという点も、日本人である筆者にとって彼女の不思議な魅力に大きくプラスに作用しています。





19. 椎名林檎 - 日出処

(Ringo Sheena - Sunny)


そういえば、小学生の頃からずっと聴いてて好きだったということを今年になって改めて思い出して(東京事変も含めてずっと追いかけてはいたけど)、折しもアリーナツアー『林檎博'14 -年女の逆襲-』の千秋楽(@マリンメッセ福岡)に行く機会を得たので、ここにきてようやく初めて生で椎名林檎のライブを体験することができました。
そんな経緯もあり、この約5年ぶりとなるソロ名義での新作を手に取ったわけですが、邦楽が好きで聴いてた頃を不意に思い出してすごく懐かしい気分になりました。過去の作品の断片を思い起こさせるメジャー感満載の楽曲の応酬。そしてこのアルバムが軸となったライブが素晴らしかったことは言うまでもなく、少し前に話題になった「生よ生」発言やキャバレー経営の云々の話にも納得せざるを得ない(ライブ本編後半がまさにキャバレー的エンタメ感に溢れた演出だった)くらいに質の高い音楽体験だったことは間違いないです。
そういえば彼女はレーベルの同期でもある宇多田ヒカルのトリビュートアルバムに"Letters"で参加していますが、この曲を初めて聴いた時にまずナタリーでのインタビュー宇多田ヒカルについて言及した時の言葉を思い出しました。これらの発言も踏まえて、椎名林檎が現在の邦楽界における唯一の希望であり最後の砦のような存在であることを再認識した上で、彼女の素晴らしさを再確認した次第です。





18. Najwa - Rat Race


(レビューはこちら)


日本の巷に蔓延る「美魔女」という安っぽいレッテルも、彼女の前では意味を成さない。(←もし国内盤が出るとしたらこんな感じのフレーズを帯に付けたい)
アルバムタイトルにもなっている"Rat Race"は所謂「出世争い」の意味合いを持つ言葉であり、ネズミが回し車で走り続けるように、必死に理想を掴もうとする人間の美醜のすべてを彼女はこのアルバムで炙り出し、嘲笑っているようにすら思えます。





17. Jessie Ware - Tough Love


まずはじめに、祝・ご成婚!!!しかもなんと現在ハネムーンで日本を旅行中とのことで、ますますおめでたい。
ブックレットの中には旦那さんへのメッセージも書かれており、本当に様々な形の愛に満ちたアルバムです。かといって必ずしも多幸感に溢れているわけではなく、「報われない愛」が作品の軸となっていることは彼女自身もインタビュー等で発言しているようです。例えるなら真夜中、眠りに落ちる前に(時に後ろ向きな)考え事を巡らせる時のように、静かで穏やかな闇がうっすらとアルバム全体を包んでいるような印象です。前作同様ソウル/R&B路線を真摯かつ誠実に貫きつつも、MiguelやEd Sheeranなど裾野の広い作家のチョイスで粒揃いにまとまっております。個人的にボーナストラックのラストナンバー"Midnight Caller"が非常〜〜〜にツボなので、聴くなら是非デラックスエディションで!





16. Katy B - Little Red


2011年、ダブステップ界の歌姫としてUK音楽シーンに彗星の如く現れたKaty B嬢ですが、2枚目となる今作(全英初登場首位!)は従来の歌モノのクラブミュージック路線に加え、エレポップやバラード曲など、ボーカリストとしての万能っぷりを遺憾なく発揮したバラエティに富んだ内容となっています。安定した歌唱力を伴って様々なタイプの楽曲にアプローチすると同時に、前述のJessie Wareとのコラボレーション曲"Aaliyah"を筆頭とした他アーティストとのコラボレーションにも積極的で、2012年にリリースされた"Danger"という全曲コラボ曲の4曲入りフリーEPがひとつの弾みとしてアルバムに更なる広がりを生み出したのでは無かろうか。
惜しむらくはシングル"What The Love Is Made Of"が収録されなかったことと、少し幅を広げすぎて散漫に陥る一歩手前の危うさを感じた(特にアルバム後半)ことくらいでしょうか。次はまた1stの路線に立ち返るのも良さそうですが、シーンの移り変わりの大きい世界なので、どんどん冒険していって欲しいところです。
アルバムリリース後にSoundcloudで発表されたレゲエチューン"Little Red Light"も何気に良曲なので合わせてどうぞ…というかこれもアルバムに入れるべきだったのでは…!
そして例の如くデラックスエディション収録のボーナストラックのラストナンバー"Sky's the Limit"が個人的なイチオシという。笑





15. Oh Land - Earth Sick


まず驚いたのが、前作から1年という短いスパンで制作されたとは思えない完成度の高さ。今作はクラウドファンディングを用いてリリース資金を集めるスタンスで進められ、配信リリースの数日前にぶじ目標額に達成した模様。CD等のフィジカル媒体としてのリリースは限定的(未だ製作中の模様)ながら、インディペンデントな形で面白い試みを続けながら作品を、しかもこんなにハイペースに作りつづけていてくれることに、ファンとしては純粋に嬉しく思います。
前作の"Wishbone"では炎(に包まれる2人の骸骨)がアートワークに用いられていましたが、今作は澄んだ水の中に飛び込んだようなフィーリングを持ち合わせた好対照なビジュアルです。アーティストの意図はさておき、この2作品をひとつの対として捉えて聴いてみると良いのかもしれません。


http://www.youtube.com/watch?v=C14g1P7TlhY:movie:W475




14. FKA twigs - LP1

[:W475]


筆者が最初に衝撃を受けたのは"EP2"収録の"How's That"のMVで、まず映像のビジュアルにやられて、Jesse Kandaにたどり着き、彼の映像作品群を辿るとArcaの名前がすぐに出てきて、そのArcaがFKA twigsのこの曲を…という具合でなるほど全部が容易に繋がっていることに気付き、色々としてやられました。
今年は彼女、そしてArcaとJesse Kandaにとっても大躍進の一年だったと思う。実際に彼らが今年の音楽シーンにおける重要人物たちであることは自分がここで取り立てて言うまでもないでしょう。確かにかなり持ち上げられすぎてる感は否めませんが、Google Glassとタッグを組んだ映像なんかを観てると、紛うことなき才女オーラをひしひしと感じます。Lady Gagaがポップアイコンとして多くのクリエイターにお金を落とした(聞こえが悪いけど褒め言葉です)ように、Perfumeが日本のメディアアートのプラットフォームとして世界を驚かせたように、彼女も音楽だけにとどまらないあらゆる方面でどんどん活躍して私たちをワクワクさせておくれよ、と願ってやまない逸材です。





13. Young & Sick - Young & Sick


意図せず女性ソロが続きましたが、ようやく男性アーティストの登場です。
実はこの人、4年前(もうそんなに前になるのか…)に一度取り上げてて(こちらを参照)、そのときはJapayorkという名義でエレポップをやっていましたが、しばらくして活動が途絶え、音源がYouTubeから一掃されるなど非常に残念に思っていました。
そしたらなんといつの間にYoung & Sick名義で活動を再開しているではありませんか。しかもそれだけに留まらず、Maroon 5やMIKA、Robin Thickeなど数多くのアーティストのアルバムのジャケットを手がける等めちゃんこ精力的に活動してて驚きつつも安心しました。
そしてデビュー作にあたるこちら、現時点では日本では配信リリースすらされていませんが、ダウンロードコード付きのアナログ盤がリリースされています。赤・白・黒の3色で構成された彼のイラストを全面にあしらったジャケットや赤い盤面など、パッケージとしても非常によく作られています。それでいて楽曲も良曲尽くしとは、Japayork時代からずっとそうでしたが、改めて彼の多才っぷりを堪能することができました。





12. Les Sins - Michael


Toro y MoiことChaz Bundickの別名義での作品。ダンスミュージック的側面にスポットが当てられ、 Chaz自身はボーカルを取らず、サンプリングや客演のボーカリストによって声の要素を補完しています。
ダンスミュージックと言っても、イメージとしてはリビングルームでグラスを片手にひとりヘッドホンをしながらステップを踏んだり踊ってみたりするような感じ。陽光射すアウトドアな雰囲気のToro y Moiと対照的ですが、一日を通してこの同一人物による別名義のアルバムを楽しむという選択肢がここに生まれました。アルバムの締めを飾る"Do Right"のイントロなんかはもろToro y Moiだし、別モノとは言えどことなく繋がる部分は他にも随所に感じられます。結局のところ彼の作る音はどれも好きなんだなあ、ということに気付くわけです。





11. Especia - GUSTO


90年代のトレンディドラマ、深夜の天気予報、スーパーマーケット、Vaporwave…
一周回ってきたリバイバルカルチャーに加え、昨今インターネットを中心に沸き上がっていたキーワードを組み合わせ、アイドルという形として集約されたこの作品。たとえ周りの大人達のしたり顔が脳裏に浮かんできたとしても、好きだし、その術中にはまりたい。だからアイドルは面白い。かといって別にライブの現場に行く訳ではないのですが、オール生バンドや船上ライブなど徹底していて好感が持てます。そしてこんなアルバムを出された日には、やはり次の一手が気になってしまいます。がんばれEspecia。






【BEST OF 2014】
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