ALBUM OF THE YEAR 2014 (10-1)




【BEST OF 2014】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
3. TRACK OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )


10. Queen of Hearts - Cocoon


(レビューはこちら)


ビヨンセ商法(何の前触れもなく突然リリースすることの例え)で上半期の終わりにドロップされた初のアルバム。先月には既発EPの楽曲やリミックス、未発表曲等を加えた500枚限定の2CD盤もリリースされました。(こちらで購入できます)
そしてこの2CD盤のdisc2がこれまた素晴らしくて、ファーストEPに収録のハードなダブステップチューン"Black Star"や彼女お得意のしっとり系エレポップ"Where Are You Now?"あたりの初期曲の良さを振り返りつつ、Ben Howardのカバー曲"Only Love"、AlunaGeorgeによる"Shoot The Bullet"のリミックス等ボリューム満点です。1stアルバムにして全てを出し切る勢いです。
何度も言うけど、これだけのポップネスを持ち合わせておいてもっと注目されないのは本当に勿体無いと思います。





9. Metronomy - Love Letters


前作"The English Riviera"で初めて彼らの曲をまともに聴いて、一時期取り付かれたようにリピートしまくってましたが、今作もまた同じような現象に陥ってしまいました。何故だか自分の奥底にあるノスタルジーの琴線をくすぐられてしまう。それと、イントロでハッとするようなメロディーを聴かせてくれるのが彼らを好きな理由のひとつであることが分かりました。シンプルでミニマルで不可思議でちょっと(いや、かなり)変態的だけど、それは「不器用」だとか「クセがある」のとは少し違っていて、鉛筆で書かれた真っすぐで洗練された線のような、温かな芯のようなものをアルバム全体の内側に感じるのです。





8. Rebecca & Fiona - Beauty is Pain


(レビューはこちら)


彼女達は戦っている。社会あるいは人に対する憤りや焦りといった感情が楽曲やビジュアルにも如実に表出しています。前作の方がよほど可愛げがあったし大人びていたように思えます(どちらが良いという話ではなく)。アルバムタイトルのニュアンスは“美しさには痛みが伴う”という風に解釈しましたが、楽曲においてはBeautyよりもPainの方に重きが置かれているような印象です。
そして実際の彼女達の生活はかなり豪奢なものであることがinstagramからも窺えますが、アルバムの楽曲からそういったハッピーなオーラが微塵も感じられないのも面白い。また、先行シングルのうち王道EDMな楽曲を敢えてアルバム収録曲から外し、変にアメリカナイズされずにスウェディッシュポップ路線を貫いた姿勢にも好感が持てます。





7. Todd Terje - It's Album Time


《北欧ニューディスコの至宝》と称されるほどにアルバムリリースが渇望されていたと言っても過言ではないノルウェーのDJトッドおじさん(まだ33歳だけど)。
SF映画のようにシネマティックに展開するシンセポップで幕を開けたと思えばラテン、サンバ、ディスコと縦横無尽な音世界に引き込まれます。少しおどけるように気取りながらも愛嬌を振りまくサービス精神は、一連のジャケットを手がけるBendik Kaltenbornによって描かれたイラストによってもバッチリ表現されています(過去のEPのジャケットのイラストもことごとくツボでした)。
"Delorean Dynamite"(このド直球なタイトルよ…)のMVでは実際に映像で使われているデロリアンの車を本当に売りに出してしまうという面白い試みが話題になりましたが、映像そのものも80s感丸出しでとても清々しい。





6. Javiera Mena - Otra Era



チリの女性SSW、約4年ぶりとなる3作目。ここにきて一気にメジャー志向なアレンジに舵を切った意欲作となり、本国での人気っぷりがこちらにも伝わってくるほどでした。日本のカルチャーに多分なる影響を受けたことが丸わかりなどころか、言語が違うこと以外はほぼJ-POPじゃん!と思うような楽曲が多く見受けられます。これは一刻も早く国内盤をリリースしてより多くの日本人の耳に届けるべきだと声を大にして叫びたい。
そんなアルバムの発火点となったのが昨年末にリリースされたシングル"Espada"であり、本作を象徴しているといっても良いこの曲をアルバムのラストに持って来る辺りもなかなか憎い演出です。また、この曲のMVには(主に)日本のアニメーションに対してのオマージュが随所かつ巧妙に取り入れられており、こちらも必見に値します。





5. Azealia Banks - Broke With Expensive Taste


NYハーレム出身のお騒がせ女性ラッパー、度重なる大人の事情を経てようやくリリースされた1stアルバムです。BBC Sound ofに選出されたのが2012年の話で、そこからもう3年近く経ってのデビュー作とはこれいかに。しかしながら(はたまたそのお陰か)アルバムとしての水準はとても高いです。何よりもジャケットが素晴らしい。ジャケ買いオブザイヤーは有無を言わせずこの作品に決まりました。
アルバム全体を聴いていくと曲間がうっすら繋がっていることが分かり、曲の流れが意識されていることに気付きます。特に後半は突如として挟まれるビーチボーイズ風味の楽曲"Nude Beach A Go-Go"(Ariel Pinkのカバー曲で、原曲よりも早くリリースされた上、彼女のバージョンの方が素晴らしいという)が良いスパイスになっており、2回目以降聴くとそれほど違和感を感じなくて逆に可笑しくてますます気に入りました。





4. La Roux - Trouble in Paradise


久々のリリースとなる2作目のアルバムは、そりゃあ5年も待たせたんだから良い作品に違いない!と期待値を上げてしまわないようにリリース前から気をつけていました(?)が、そんな筆者をなだめるように落ち着き払ったLa Rouxの姿がそこにはありました。これってでもあれ、前作よりも何だかスッと入って来るような…シンセポップ全開な前作はそれこそ"Bulletproof"(=防弾)仕様で音も髪型もツッパってたけど、角が丸くなったというか、これじゃまるで更正したヤンキーじゃないですか…
そんなこと言ったら怒られそうですが、とにかく全編にわたって風通しの良いエレポップで非常に秀逸です。7分のロングトラック"Silent Partner"なんかは前作を一瞬だけ彷彿とさせるダークな楽曲ですが、あとはもうほとんど全部が新しいLa Rouxの様相を見せています。プロジェクトがデュオからElly Jacksonのソロへと移行したことも大きな要因かと思われますが、5年のブランクも相俟っていい感じに燻されてます。たとえ次がまた5年後だとしても、このアルバムを長く聴きながら待ち続けることでしょう。





3. Sophie Ellis-Bextor - Wanderlust


(レビューはこちら)


元々バンド上がりのシンガーであるということを皆さんお忘れではないでしょうか、と言わんばかりのアコースティック路線への舵切りにあっぱれと言わざるを得ないし、セールスとしてきちんと前作のもろもろを挽回した点についても評価に値します。メインストリーム系の女性シンガーの中でも下手にセレブかぶれになったりせず、シンガーソングライターであることの矜持を示したベテランの仕事にただただ拍手と賞賛を送るのみです。





2. FEMM - FEMM-isation


(特集記事はこちら)


もはやこれは純然たる「邦楽」でも「日本の音楽」でもない(そもそもそうである必要性も前提も不要でした)けど、日本の東京から発信されるプロジェクトであることを忘れてはいけない。
そして邦楽界はこのアラートに対してもう少し敏感に反応を示すべきだと思う。まず彼女達はそういった所など眼中に無いのかもしれないけど、真意はさておき、こういったプロジェクトは1枚目のアルバムを出して以降が勝負所だと思うので、来年の活動にも期待してます。
ライブ映像がいくつかYouTubeに上がっていますが(例えばこちら)、これは映像じゃなくてちゃんと生で観ないと分からないと思ったので、来年は是非生でパフォーマンスを拝みたいところ。





1. Ronika - Selectadisc


やっぱり80年代エレポップサウンドが一番でした。
今年のベストはこちら、英ノッティンガム出身《2010年代にタイムスリップした初期Madonna》ことRonika嬢による待望の1stアルバムです。
過去のシングル楽曲群については特に遡ること2011年にリリースされた"Only Only""In The City"の2曲がとにかく別格で、これが両A面で出た時は胸をブチ抜かれました。新録曲の中では強めのビートとシンセサウンドでスローに攻める"Shell Shocked"がダントツに素晴らしい。
80年代リバイバル系エレポップはここ約5年ほどで数多く聴き倒してきましたが、ようやくドンピシャなアーティストに出会えたような気分です。



そんな彼女は先月には早くもニューシングル"Marathon"をリリースしています。あわせてどうぞ。






【BEST OF 2014】
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