TRACK OF THE YEAR 2014 (10-1)




【BEST OF 2014】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
3. TRACK OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )


10. Röyksopp feat. Robyn - Monument


新作"The Inevitable End"をもってアルバムという形式でのリリースを終えることをアナウンスしたRöyksopp。終末感を漂わせながらも力強いエネルギーに満ちた一曲。コラボ作"Do It Again"に収録されているバージョンに比べてビートを効かせたエレクトロ色強めな仕様になっているので、こちらのバージョンを聴くと元の曲の方に戻れなくなってしまいました。
未練タラッタラで非常に申し訳ないですが、中止になった来日公演がもし復活するなら絶対にこの組み合わせで来て欲しいですね…。ライブ映像を編集してVHSにダウンコンバージョンした(ような質感の)モノクロのMVがまた愁いを誘います。





9. Client - Refuge


新しいヴォーカリストのClient NことNicoleを迎えての新作"Authority"は個人的にいまひとつなところがありました。楽曲そのものの出来は新生Clientに相応しくアップデートされていますが、やはり結成当初からのClient B(Sarah Blackwood)のウィスパーボイスに慣れてしまっているのと、Client Nの声質がこれまた正反対と言っていい程にパワーと芯があるもので、サウンドプロダクションの変化も相俟って未だ別物のような違和感が拭えない部分が残ります。(ファン心理が足枷になる良くない一例)
その中でもいくつか光る楽曲があって、特にこの先行シングルとしてリリースされた"Refuge"、一聴するとダークエレクトロ風味の味付けの楽曲ですが、Nicole嬢のボーカルが(特にサビに入ってから)まるで希望の光が射すかのようなごとく雰囲気を変えるいい味を出してて、面白いバランス感覚です。そしてMVがそれを上手く表していることも特筆に値します。別物だけど別物じゃない、今まで培われたClientらしさと新しさを兼ね備えた、今の彼女たちの指針を明確に表したような一曲です。





8. Especia - アバンチュールは銀色に
(ENG: Towards a Silver Adventure)


Especiaとvaporwaveカルチャーを決定的に結びつけたのはこのMVでしょうか。いやはやこの感じ、LDカラオケか、スキー場か、はたまたボウリング場の映像モニタか。ゆとり世代の筆者にとっても懐かしさと憧憬の念を禁じ得えない出来映えにノックアウトです。楽曲にも同じように漂う80年代後半〜90年代前半を彷彿とさせる空気感は、アルバム"GUSTO"に収録されているバージョンで聴けるハウシーなのイントロからも顕著に表れています(ちなみに元ネタとされるDerrick May "Strings Of Life"のリリースは1987年)。





7. Christine and the Queens - Saint Claude


フランス・ナント出身のHéloïse LetissierによるプロジェクトChristine and the Queens、本国のアルバムチャートでTOP10入りのスマッシュヒットを果たしたデビューアルバム"Chaleur Humaine"からのリードシングル。今年はSiaの"Chandelier"Kieszaの"Hideaway" など所謂「踊る系」のMVをきっかけに注目されるアーティストが多い印象でしたが、個人的にはこの曲を推します。所々モーフィングによって身体を伸縮させながらアーティスト本人がひとりで踊るシンプルな映像。しかし内なる情熱の炎を燃やすかの如く文学的で時に難解な歌詞世界(文学はおろかフランス語もさっぱりなのであまり深くは追究できませんが…)を表すには充分すぎる要素であるように思えます。
このほど同じくアルバムの収録曲から"Christine"のMVも公開されましたが、こちらは青い背景に4人のパフォーマーと好対照。コンテンポラリーダンス(身体表現)の芸術性も彼女の作品を構成する重要な要素のひとつであることが2つのMVから窺えます。





6. La Roux - Kiss And Not Tell


先に挙げたEspeciaともリンクするような80s感満載のMV。日本で言うところのツーショットダイヤル的なアレでしょうか。関係があるのかないのか、アルバム収録曲のいくつかに"Sex"という単語が出てきますが(某カイリーさんの新作じゃないけど)、それらをオブラートに包んで直接的なエロさを感じさせないところに彼女のセンスを感じます。そして何よりも映像の中のElly嬢が前作の頃と比べて表情に人間味が出てきて何だか安心しました。デビュー時は笑顔なんか絶対見せないと言わんばかりのお固いオーラが凄かったのに。こうして見るとやっぱり更正していい感じに丸くなったヤンキーのようだな…。
セルフリミックスと思しき別バージョンではより優しげなタッチのアレンジが施されています。アルバムとセットにして、この曲を最後にアウトロ的な位置づけで聴くとすごく良いです。





5. Katy B - Crying for No Reason


情感豊かなボーカルが映える哀愁エレクトロミッドチューン、という字面で既に最強です。シンガーとしての引き出しの多さと魅力を存分に見せつけた一曲。
また、MVの監督であるSophie MullerはSophie Ellis-Bextorの作品のビジュアル構成に長く関わっている人物とだけあって、女性の一番美しい撮り方/見せ方を心得てます。この曲の次にリリースされたバラードシングル"Still"のMVの監督も手がけており、シンプルな白い背景に赤髪のコントラストがこれまた美しいのであります。





4. Marina and the Diamonds - Froot


現時点で早くも来年のアルバムオブザイヤー候補に上がっている同タイトルの3rdアルバム(4月リリース)の幕開けを告げるこの曲。淡々とした展開ながらもファンキーなベースや背後にうっすら聴こえるピコピコとした8bit的な音色など、聴き所に欠かない仕上がり。この曲を皮切りに、タイトルのごとく様々な色のフルーツを作品のモチーフとした様々なプロモーションを仕掛けてきており、ファンの期待を全力で煽りにかかってます。とことんコンセプチュアルに振り切れた前作"Electra Heart"(2012年の私的アルバムオブザイヤー)に続き、質の高い作品を届けてくれることにまず間違いはないでしょう。





3. Azealia Banks - Chasing Time


フィメールラッパー×エレクトロサウンドの組み合わせ、そういえば好きだったな。ということをふと思い出した(J-POPばかり聴いてた10年前でいうところのHeartsdalesとか)。ラップだけでなく歌もきちんと聴かせるところも含めて。
彼女の楽曲に胸を射抜かれるきっかけとなったUKハウスど真ん中の"1991"をアップデートして2010年代の音として落とし込んだような一曲で、これまたガツンとやられました。





2. QT - Hey QT


PC MusicのA.G.CookとSOPHIEがタッグを組み、(まさかの)XL Recordingsよりリリースされた謎のプロジェクトQT。新しいエナジードリンクの広告?そしてジャケットに映っている女子はバーチャルアイドル的な立ち位置なのかと思いきや、ライブ出演instagramの更新など、実世界でちゃんと活動してて逆に不思議。逆に。何よりもこの楽曲、昨今のEDMブームに対するアンチテーゼか、もしくは日本の音楽カルチャーへのオマージュやひとつの回答としても解釈できそうなシンセのリフが印象的かつ中毒性高し。ドリンクも実在するそうなのでぜひ飲んでみたいところです。





1. FEMM - Dead Wrong


毎度毎度本当にクオリティの高い映像と音楽を繰り出してきたFEMMですが、個人的に一番グッときたのはこの曲でした。MVの和装はクールジャパン的な何かを匂わせつつも、洋楽的なトラックのお陰で独特のミクスチャー感が生まれています。着物もやっぱりテロッテロのラテックス生地である辺りも抜かりなし。
どうしても自分はFEMMというプロジェクトについて考える時に「日本であることの必要性」を論点の軸に置きがちですが、そう言ったもろもろを抜きにして、純粋にエレクトロポップとして非常に秀逸な楽曲であることをきちんと記しておきます。





【BEST OF 2014】
1. ALBUM OF THE YEAR ( 20-11 | 10-1 )
2. EP OF THE YEAR ( 5-1 )
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