祝・Grammis受賞!Little Jinder


ちょっと前の話ですが、先月発表されたスウェーデングラミー賞ことGrammis、その中でポップ・アルバム部門の最優秀賞(Åres pop)をLittle Jinder(Josefine Jinder)のセルフタイトル作が受賞しています。
昨年のALBUM OF THE YEARにも挙げたストックホルムのエレポップ女子です。(こちらのエントリ参照)


この部門、Lykke LiやFirst Aid Kitというビッグネームに加え、USデビューも果たし売れっ子街道を驀進中のTove Lo、そしてKentの最新作に客演で参加したことで話題の新鋭Beatrice Eliという錚々たるメンツがノミネートされており、その中では正直に言うとかなり地味な存在であることは否めない彼女の作品。しかしながらノミネート作の中で唯一のスウェーデン語歌唱であることや、ラジオで火がついた先行シングル"Vita Bergens Klockor"(Rebecca & Fionaが客演)が受賞に繋がったのではないかと思われます。
(どうやらここ数年スウェーデンの大衆音楽シーンにおいて英語詞から母国語での歌唱に立ち返るアーティストがちらほら散見されているらしく、女性シンガーのSeptemberが本名であるPetra Marklundで2012年にリリースした”Inferno”辺りが分かりやすい一例として挙げられます。)



また、彼女は1月に開催されたされたP3 Guld(国営ラジオ局が主催の音楽アワード)にて、賞にノミネートはしなかったもののパフォーマンスでイベントに華を添えました。
何故かバックに大写しにされるレオナルド・ディカプリオの画が何ともシュール。


そんな彼女の活動遍歴を改めて振り返ると、USインディーレーベルのTrouble & Bassから2008年にリリースされたEP”Polyhedron”に始まり、その翌年にシングル”Youth Blood”で一時注目を浴びながらも、地道な活動を続けていました。ここでも過去に一度取り上げてました(→こちらのエントリ参照)。
メジャー契約はほんの昨年の話で、2012年のGoldenbestへの移籍をきっかけに、現在のビビッドな色合いのビジュアルや音楽的なスタイルが確立されていったように思えます。それまではデビュー期のLittle Bootsのような宅録少女的佇まいでした。



そこからさらにルーツを辿ってみると、実は彼女が音楽一家の生まれであることが分かりました。父はカントリー系SSWのJonas Otter、そして母のÅsa Jinder(オーサ・ジンデール)はスウェーデンの民族楽器ニッケルハルパの奏者として1979年(当時15歳)から活動しており、双方ともに現役の音楽家として知られています。
Åsaは1995年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストではノルウェー代表のデュオSecret Gardenと共にゲストアーティストとして出場し、見事優勝を果たしています。Wikipediaには1999年に日本の天皇皇后両陛下のスウェーデンご訪問に際し、謁見とともに演奏も披露したとの記述もありました。
Grammisに関しては母Åsaが1990年と2000年にフォークソング部門で2度受賞しており、今回のJosefineの功績により親子2代にわたっての受賞達成と相成ったわけです。おめでたい!



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そしてこの受賞作、メジャーデビュー作にして初の全編スウェーデン語歌唱のアルバムとなるわけですが、パンチのある楽曲こそ無いものの、カラフルな靄のレイヤーが全体に掛かった密やかさと浮遊感が支配するゆるふわ系エレポップアルバムに仕上がっています。
このほどMVが公開された”Random Folk”は、先にも挙げたRebecca & Fionaのビジュアル構築にも深く関わっているTommie Xが手掛けています。Vaporwaveや90sカルチャーのエッセンスを取り入れつつも、モチーフの組み合わせの妙によるどこか不穏な(ハッキングされたWindowsのパソコンのような)世界観が何ともクセになる映像です。